スマートオフィスは快適空間ではなく、監視空間なのか

もし誰かにオフィスで働くにあたって嫌な事をあげてみろと言ったらそのリストの数はとても長いものになるでしょう。

多分そのリストの中には,仕事の量、上司、同僚、座り心地の悪い椅子,自然光の不足、まともな食べ物が食堂にないこと、極寒のエアコン、などが含まれていることでしょう。

オフィスで働く人々が電話のアプリケーションを使って職場の環境を調整できるようになる。
こうしたテクノロジーの発展が今後これらの職場での不満の一部を解消する役目をはたすことになるかもしれません。

しかし、それには高い代償がつくのでしょうか?
オフィスの環境をより賢く調整することのできるセンサーは、同時に職場を常に監視しているのかもしれません。

システムに接続されたオフィス

調査会社ガートナーによると2016年内に商業施設は5億以上の「接続されたもの」をもつことになると予想されています。

この動きを大きく促進させる要因はエネルギー効率の改善にあります。
現在商業施設は世界の電力消費量の40%を占めています。

何百ものセンサーを壁や天井、さらには照明に埋め混むことによって、オフィスを滑らかに運営することのできるビジネスマネージメントシステム(BMS)と連携され、さらには、組織のネットワークやインターネットにも接続できることが可能になります。

アムステルダムにあるデロイトの本社では、社員がアプリを使って室内照明、温度調整、ブラインドを操作することができ、またロンドンの建築コンサルタントのアルプではセンサーが取り込まれたスマートデスクと携帯のアプリを接続することで社員が照明や温度を調整することのできるシステムを実験中です。

さらに有能なスマートシステムは20%から50%ほどの大きなエネルギー節約を提供することが可能と予想されています。

スマートシステムでエネルギー節約

「驚異的な量のエネルギーが空きオフィス、家屋、特に居住建築物の暖房に使われています。」
と マサチューセッツ工科大学の感知可能都市研究所を率いるカルロ・ラッティ氏。

彼のチームは建物内にいる人々の数を計ることによって室内温度や照明を調整する、とくに空の建物を、コンピューターがスタンバイモードになるように、「オフ」の状態にするというプロジェクトに取り組んでいます。

彼は洗練されたモーショントラッカーの先導に敏感に反応する赤外線加熱要素を使うことによってそれぞれの建物の使用者にあった正確かつ個人的な「気候」を提供できる局部的な温度調整システムについても研究中です。

「個々の温度クラウドシステムが人のスペース内での動きを追跡し、全体のエネルギーの効率を改善しながら、広範囲での快適度を確実に得ることができます。」
とラッティ氏は説明します。

これはエアコンについて文句を言ったことのある人達すべてに魅力的でしょう。
人はそれぞれ違う温度を必要とし,特に女性は男性の好む温度よりも2−3度高い温度に、快適と感じるという多くの証拠がオランダの研究者により証明されました。

より有能な照明や温度調整はうまく動けばそれはそれでいいのですが、すべてのテクノロジーと一緒で、いつも目的に適応するとは限りません。

スマートオフィス vs 人間 — 邪悪なテクノロジー?

王立工学アカデミーの一員であり、スマート建築の専門家であるダグ・キング氏はこう語りました。
「暗い中で掃除をしたくない清掃員によって照明システムが無効にされたり、たった一人が夜遅くまで働いている中、大きなオフィスのすべての照明がついているとかいった根拠の怪しい話がたくさんあります。」

「人は仕事を快適な状況で成し遂げるためには、自分のやりたいことをします。
それが建物のシステムに不正侵入することであるかもしれませんし、またはセロテープをセンサーの上に貼ることでシステムを閉じることであったり、建物の整備保守員がいろいろな不満を聞くのに耐えかねて、コントロールをリセットし直す場合もあるでしょう。」

多分これは,スマート建築対スマートな人間のケースだといえるでしょうか。

スマート照明がしっかり動かないなどということに対する懸念は、隠されたセンサーがどんなデータを収集するのかということに対する疑問に比べたら取るに足らないことです。

建築家レム・クールハースはテクノロジーが建物に侵入している方法に対して反対の声を上げています。
彼は人々が個人のプライバシーを便利性のために犠牲にすることを惜しまないのは「全く驚愕」であり、スマートシステムの増加は邪悪なものになり得るかもしれないとも言っています。

彼は建築雑誌デジーンでこう語りました。
「スマートテクノロジーの使用はこの一世紀以上に及ぶ建築業務において最も急進的な転換を代表しています。
建築家はスマートシステムの効果にばかり気をとられていてその危険性を見逃しているのです。」

データの使用法

大半の建物のデータは今のところ匿名で収集されていますが、だからといって他の目的に使われないという補償はありません。
「建物管理システムから得られたデータを使って、誰がオフィスにいるかいないかを確かめるということをするのが予想できるでしょう。」
とキング氏。

英国新聞デイリーテレグラフ紙がまさにそれを今年行いました。
机の下につけたセンサーを使ってオフィスの利用度を計ることで、エネルギー効率度をさらに上げようしたのです。

ところがスタッフ一同はそのような見方はせず、これに対して怒りの声を上げました。
一方ジャーナリスト組合はこれを「監視」だとみなし、この試みは発表された後すぐに取り消されることになりました。

これはスマート建築が人に寄って全く違う物である事実をを象徴する事件といえます。

建物の貸主がエネルギーや他の費用をさげたい一方、その建物に住むあるいは働く人達は、データが匿名で収集されるとしても、自分たちが常に監視されている事をありがたくは思わないでしょう。

人に奉仕するテクノロジー

「テクノロジーが こうした建物で働く人々に奉仕することを私達は確立する必要があります。」
とアルップの建築ダイレクターのナイル・ジュールソレンセン氏。

「私達は人間を出発点として考えるべきです。
人間が第一であり、テクノロジーは人間を補助する物なのです。」

キング氏はスマートデザインの新時代の到来を促すデータの使用方法が色々あると言います。

「十年前、私達は単に推測していただけでしたが、今では人々がどのようにオフィスを使っているかを計る巨大な量のデータが収集することができ、そのデータを使って次に建てる建物を改善することができます。」

デロイテやアルップのような会社は顧客が実際に移り住む前に、 建物がどのようであるかをみせるために、バーチャルリアリティのようなテクノロジーを使っています。

「究極的にいって、デザイナーは我々が未来においてどんな働きかたをするのかということに対してより急進的な質問をし始めなくてはいけないと思います。」
とジュールソレンセン氏。
「例えば、インターネットが世界中の人々を繋げることのできる時代に、オフィスを持つこと自体が賢いと言えるのでしょうか?」

「私達の働きかたは20年前からずいぶん変わりました。
それにもかかわらず、私達のデザインは過去の働きかたを基本にしており、それにテクノロジーを付け加えているのです。
私達は未来ではなく過去をデザインしているのです。」

参考
http://www.bbc.com/news/technology-35696521

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