ロンドンのオフィスレンタル市場が高騰するなか、多くのスタートアップ企業、フリーランサー達は、現来の本拠地であったシリコンラウンドアバウトを離れざるを得ない状況に追いやられています。
こういった状況の中、自宅や使われていない商業用ビルの空いたスペースを安価でオフィススペースとして提供するサービスが注目されています。
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Spacehop — 空き部屋をコワーキングオフィスに
Spacehopは昨年10月にビジネスを始めて以来、「Airbnbのオフィス版」と銘打って、ロンドンのフリーランサーたちに短期間借りられるおしゃれなコワーキングオフィスを提供しています。
Spacehopの創始者の一人マシュー・ベリー氏は語ります。
「私とガールフレンドがロンドンでアパートを探しているとき、予算に合った手頃な家賃のアパートを借りるのに大変苦労しました。
一軒家の一部屋を借りるだけで月1300ポンド、月収入の大半を家賃に使わなくては行けないわけです。
そこで家の持ち主が家のスペースを使われていない時間に貸し出す事で、収入を得るいうアイデアがわきました。」
仕事で疲れて帰ってきた家に他人が部屋をオフィスとして使っているという設定は受け入れられにくいのではと聞くと、
「家主が家に帰る迄には,家は空になっていますから夜は自分の家に元通りです。
借りる人の識別確認プロセスや家主への保険もしっかりしているので、家主は安心してスペースを貸す事ができるのです。」
とベリー氏。
オフィスのデスクを1つ借りるにあたって月350-400ポンドが一般的なところ、Spacehopは1日10-20ポンドで借りることが可能。
この借りる期間の融通性と安価が小規模の会社やフリーランサーにアピールする要因です。
ヨガ講師ジェイナはロンドン東部にある古い倉庫を改装した建物に住み、そこでヨガを教えています。
彼女が家を使わない時は、家のスペースをSpacehopを通して提供。
借り手のジョナサンはファッションスタートアップを経営し、このスペースを1日17.2ポンドで借りています。
「僕は変哲もない普通のオフィスで働きたくない。
仕事に刺激を与えてくれるスペースが必要なんだ。
でもコストを低くすることも重要。
そういう点でこのサービスは自分にあっている。」
Vrumi – 空きスペースを1日貸し切り
Spacehopがコワーキングオフィスの形をとっている反面、Vrumiはスペースを貸し切りで貸すという方針をとっています。
Vrumiの創立者のキャンベル氏がこのアイディアを持ったのは、彼が足を骨折したときでした。
治療に関わっている理学療法士との話のなかで、自分の家の部屋を貸した方が、理学療法士が借りている治療所より安いということがわかったのです。
Vrumiは現在500のホストを登録しており、大概の予約はスペースを貸し切りで平均1日60ポンド。
Vrumiのホストの大半は、子供が巣立った家に住む夫婦、または余分な収入が必要な知的職業に従事する若者、そして使用者の大半はセラピストやマッサージ師、写真家そしてスペースをミーティングに使う小規模ビジネスなど。
ロンドンの中心街ノッティングヒルにあるキャンベル氏の素敵な家を借りたいという需要があるのはわかりますが、果たして郊外にある普通の家を借りたい人達はいるのでしょうか?
「家のロケーションが需要をつくります。
セラピストまたはマッサージ師などは顧客のいるところに近い場所を1回だけ借りると言うことがほとんどなので、
郊外にある普通の家というのはこうした利用者にとっては最適な場所なのです。」
とキャンベル氏は説明します。
新たな“スペース戦争”
Spacehopはインターネットを通じて家主とビジネスを繋げる数多くのいわゆる「共有経済」の一環であり、家や車などの「遊休資産」からいかにお金を作るかというのがビジネスの根源にあります。
Airbnbがこのムーブメントの先頭に立ち、空き部屋を一般旅行者に貸し出すというビジネスモデルから世界5500億ドルのホテル市場のシェアを獲得することに成功しました。
そして現在、「共有経済」の前線は一般人対象からビジネスへと移行しつつあります。
フランスのOfficeRiders、アメリカのBreather、そしてイギリスのSpacehop、Vrumなど、ビジネスを対象に空きスペース賃貸ホストが世界のあちこちで出現しているのも、その反映といえるでしょう。
「共有経済はフランスにおいて大きなインスピレーションです。」
とパリがベースのOfficeRidersの創立者フロリアン・デリファー氏。
OfficeRidersは「あなたの家は彼等のオフィス」をモットーとして2014年に創立。
去年には1300件の予約を扱い、予約が月々20 − 30%増にものぼるという急成長ぶり。
OfficeRidersのアイディアは友人とサンフランシスコを訪ねたときにノートパソコンを使えるスペースを探すのに苦労した事からえたそうです。
「私達のようなオフィスワーカーが増えつつあるということに気がついたのと、自分たちの周りのスペースが無駄になっているということがいやだったのです。」
現在OfficeRidersの使用者の3割はデジタルノマドで、あとの半分以上は、現場から離れたミーティングルームと必要する会社が、会社専用に使用するために予約する例がほとんど。
しかし今後は20、30代の「ミレニアル世代」の需要が増えることを予想しています。
新たなビジネスに置ける課題、信頼そして税金
それにしても、これらの借り手が家を壊したり、物を盗んだりしないという補償はあるのでしょうか?
過去にAirbnbで裁判になった有名な件がいくつもありました。
元々Airbnbは「貸し主への補償」を最高100万ドル、事実上どんな損傷自体の代償を払いもするという約束をしていました。
それが2015年から、事故、損害と第三者請求を含み銀行が保険債務を行う保険証書を発行することを開始しました。
Spacehopは窃盗と破損を含む保険を交渉している最中で、Vrumiは建物とその中身そして賠償責任の保険をホストが選択するというシステムを導入しつつあります。
これは新たな領域だとVrumiの創設者キャンベル氏は指摘します。
「たとえ部屋を所有してなくて借りているだけでも、空いている時間にビジネスに貸し出すいうことに対して法律上の問題はありません。
とはいうものの、Airbnbを通してホリデー用に部屋を貸すのとは違い、
部屋をオフィスとして貸すことで得た収入のすべてに税金がかかリ、税金援助ははないのです。」
新しいビジネスである以上、ビジネスが普遍化するまでは、提供する側と使う側、そして、それを規制する側の間で試行錯誤があるのは当然でしょう。
大都市での住宅、そして、オフィス市場の高騰が続く以上、スペースは今後も重要な商品として取引されることと思われます。
http://www.bbc.co.uk/news/business-35246320
https://spacehop.com/
https://www.vrumi.com/
https://www.officeriders.com/
https://breather.com/