元翻訳・通訳が教える、英語学習法

本屋に行けば、何列にも渡って英語関連の書籍が陳列され、入口付近には、最新のTOEICのテキストが並ぶ。こんな光景は、日本の大型書店ではよく見る光景ですよね。私は、TOEIC900点を取得し、その能力を活かして翻訳や通訳の仕事をしていたため、よく英語についてアドバイスを求められます。よく聞かれるのは、「どんな本やテキストを使えば、英語がマスターできるか。」というもの。この質問に対して、私はよく2つの質問で返します。

1.「洋楽、好き?」

なぜこの質問をするかと言えば、歌が好きな人は、リスニングとスピーキングが強い傾向があると感じるからです。これは、科学的にも証明されています。エディンバラ大学の研究で、被験者を3つのグループに分けて、ハンガリー語を覚えさせました。1番目のグループは、ハンガリー語を普通に口にするだけ、2番目のグループはリズムに合わせて、3番目のグループは、歌で覚えてもらいました。すると、歌で覚えてもらった3番目のグループが、一番覚えていることがわかったんです。また、歌詞から文法を学ぶと、頭に入ってきやすいです。例えば、日本では「レッチリ」の愛称で親しまれている、アメリカのロックバンド、Red Hot Chili Peppersの曲、「By the way」の一節を見てみましょう。

「By the way I tried to say I’d be there.(ところで、僕はそこに行くって言おうとしたんだ。)」という歌詞があります。この文章から学べる文法は、「時制の一致」、「to不定詞」、「that節」です。”I “tried” to say I “would” be there.” この文章は過去形です。これを、現在形に直すと、”I ”try” to say I ”will” be there.”となります。つまり、前のtriedに合わせてwillが過去形のwouldに変わっているのです。これを時制の一致と言います。また、tryの後にto+動詞の原形が来ていますね。これはto不定詞と呼ばれる用法で、「~しようとした。」という意味。ここで言えばtried to say なので、「~を言おうとした。」という部分のことです。また、sayの後に本当はthat があるのですが、喋り言葉のため、省略されています。本来ならば、「By the way I tried to say (that) I’d be there.」となります。

このように、ひとつの歌詞から、文法と発音の2つを学ぶことができます。次は2つめの質問を見てみましょう。

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2.「洋画、好き?」

洋画を観ることも、英語学習に役立ちます。18人ものノーベル受賞者を出した研究機関、the German Max Planck Societyの施設でもある、オランダの言語研究機関Max Planck Institute for Psycholinguistics の研究では、映画を字幕付きで観ることが、外国語の習得に役立つことがわかっています。Facebook創業者、マーク・ザッカーバーグのサクセスストーリーを描いた映画、「ソーシャル・ネットワーク」のセリフの一節を見てみましょう。

あらすじ

マーク・ザッカーバーグは、同じハーバード大学のエリート学生の双子とその友人からプログラミングの依頼を受けます。その依頼内容は、女性との出会いを目的としたハーバード大学専用のコミュニティサイトの制作。そのアイディアで、SNSサイトの制作をひらめいたマークは、「the Facebook」を作り上げてしまいます。それに気づいた双子はマークが、自分たちのアイディアを盗んだとして訴えようとしますが、マークは引き下がりません。

セリフで見る英語

マークは「僕のFacebookに君らのコードが使われてるか?」「僕が君たちのコードを使ったか?」とまくしたて、「If you guys were the inventors of Facebook, you’d have invented Facebook. (君たちがFacebookの考案者だって言うなら、君たちがFacebookを作ったんだろ。)」と吐き捨てます。これは、「Facebookは僕が作った。」ということを意味する皮肉です。このセリフから学べる英語の文法は、仮定法。このセリフでは、マークは双子がFacebookの投資家だったらと、”仮定”しています。つまり、双子の主張を否定しているのです。このwould have doneは、良い表現にもよく使われます。例えば、誰かが困っているときに、あなたが助けたとします。そして、相手がお礼を言ってきたら、こう言ってあげましょう。「You would have done the same for me.(私が困ってたら、あなたも同じことしてくれたでしょ。)」こう言ってあげると、「お礼なんかいいんだよ。」と、さりげなく伝えることができます。

英語学習は、本を読んだり、テキストで練習問題を解くだけではありません。勉強=机に向かう、という考えは一度捨てて、自分が楽しめる学習法を試してみましょう。

参考

Source :
http://www.telegraph.co.uk/
http://www.plosone.org/
http://www.moviequotesandmore.com/
http://www.mpi.nl/
http://www.mpg.de/

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