カウチサーフィン (The Couch Surfing) という言葉をご存知ですか。英語のcouch(ソファー)とサーフィンを併せた名称です。これは、インターネット上の無料ホスピタリティー・コミュニティで、現在世界最大のホスピタリティー交換ネットワークと言われています。旅行者が他人の家に宿泊させてもらう(ソファーをサーフさせてもらう)形式で、格安に旅をしたい人の間で人気が高まっています。
無償で宿泊
カウチサーフィンとAirbnbの違うところは、宿泊者が無償で泊まれるところです。カウチサーフィンでは、コミュニティーの軸となるサイト上のプロフィール、身分確認、メンバー同士の評価を参考に、メンバー間で連絡を取り合い、相談の上で宿泊が決まります。カウチという言葉が使われているとおり、空きスペースに泊まってもらえる、知らない土地に来た人と会話をするだけでもいい、自分に出来ることでホストをしよう、という気軽な含みがあります。
カウチサーフィン の生い立ち
このアイデアは、米国人ケーシー・フェントンが、ボストンから格安便でアイスランドを訪れた際、泊めてくれる人を探すために、アイスランド大学の学生1500人にメール送ったことに始まります。その結果、50人もの人が宿泊を提供してくれたそうです。この経験からケーシーは現在のカウチサーフィンの発想を得ました。それを2004年1月にウェブサイトで公開したのです。
世界20万都市、会員数1千万人
CouchSurfing International Incは米国ニューハンプシャー州の非営利法人で、正規の慈善団体です。サイトによると、このコミュニティは現在では世界の20万都市、1千万人にまで成長しています。カウチサーフィンは旅行者を、生活をシェアしたいと望む人たちのグローバル・ネットワークに繋げることによって、“旅を真の社会経験に変える”と謳われています。
コミュニティへの登録は無料で、ホストには基本的に宿泊リクエストを受け入れる義務はありません。自分が旅行する時に泊めてもらう代わり、地元にいる時には旅行者を受け入れるという関係が望まれています。
プロフィールの内容
見ず知らずの他人の家に泊まる/他人を家に泊めるわけですから、一番大切なのが、メンバーの安全の確保です。交渉相手を決めるには、プロフィールを熟読することが勧められています。プロフィールには自己紹介、当面の目標、写真、使用言語、訪れたことのある国、現在位置、カウチの有無、他人からの評価などが掲載されています。信頼を得るために本名で登録している人もたくさんいます。
「Has couch」(カウチ有り、宿泊のリクエストを受け入れられる)、「Maybe has couch」(カウチあるかもしれない)、「Coffee or a drink」(泊められないが会って話をすることができる)、「Traveling at the moment」(現在旅行中で泊められない)などのステータス設定をします。宿泊提供が可能な場合には、リクエストを受け入れやすいと感じる相手の性別、宿泊の状況、同時に受け入れられる宿泊者数も表示します。宿泊希望者は、希望のホストを見つけたら、丁寧にメールを書いて交渉します。
安全のために
プロフィールに表示される安全・信頼のための仕組みにはそのほかにも、ホストと宿泊者が、宿泊後にお互いの評価を相手のプロフィールに書き込むこと、クレジットカードによる身分確認制度(有料オプショナル)、創立者らに推薦されたメンバーが、信用するメンバーを更に推薦するパーソナル保証制度システムがあります。
宿泊者を直接家に招き入れる代わりに、外で会って会話をしてから、家に連れてくるという方法をとるホストもいます。人を家に泊めてあげるというせっかくの好意が悪用されないためにも、このようなコミュニティ利用者一人一人の注意深い行動が必要です。
無料で宿泊する以上の価値がある
体験談を見ると、最初は不安だったけれども、いい出会いがあって病みつきになったと言う人がたくさんいます。うまくいった場合には、カウチサーフィンは、宿泊費を節約できる以上にプラスアルファのある旅の方法に違いありません。経験者の言うように、これは誰にでも向く方法ではありませんが、人間同士の信頼感の薄れた現代社会で、他人を信じたい、人と繋がりたいという人々の欲求を満たしてくれるところが、コミュニティの心を魅了するのでしょう。