連鎖倒産を防ぐ経営セーフティ共済で節税対策

中小企業倒産防止共済、通称経営セーフティ共済とは、フリーランス(個人事業主)や中小企業の経営者が、取引先企業の倒産から連鎖倒産することを防ぐための共済です。しかし節税効果もあり、一定期間加入してれば解約時に掛金を返してもらうこともできます。今回は多くのメリットのある経営セーフティ共済について、詳しく解説しましょう。

中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)とは

フリーランス(個人事業主)や中小企業の経営者にとって、取引先企業の経営不振・倒産は重大な問題です。売掛金が回収できなくなって、最悪の場合自分の会社も倒産してしまいます。銀行との間に太いパイプがあれば別ですが、中小企業は、いざというときに融資を受けられずに連鎖倒産するケースがたくさんあるのです。フリーランスでも、仕事の報酬が取引先から支払われず、生活費や外注した仕事の支払い資金がない、という理由から廃業してしまう可能性があります。

このようなケースを防ぐための制度が、経営セーフティ共済です。月額「5000円〜20万円」までの掛金で、掛金総額が「800万円」になるまで積み立てることができるようになっています。共済金は掛金の10倍まで、最大「8000万円」まで受けることができ、1年以上加入していれば解約時に解約手当金を最低でも75%以上、40ヶ月以上加入していれば95%〜100%返してもらうことができます。1年以上事業を継続している会社もしくは個人事業主で、以下の条件に該当すれば加入することができます。

  1. 製造・建設・運輸業その他:資本金3億円以下、従業員300人以下
  2. 卸売業:資本金1億円以下、従業員100人以下
  3. サービス業:資本金5000万円以下、従業員100人以下
  4. 小売業:資本金5000万円以下、従業員50人以下
  5. ソフトウェア、情報処理サービス業:資本金3億円以下、従業員300人以下
  6. 旅館業:資本金5000万円以下、従業員200人以下

つまりほとんどの中企業は加入することができます。小規模企業共済は事業規模の小さな会社・個人事業主に限られていますが、それに比べると非常に加入のハードルが低くなっています。ちなみにウェブメディアを運営しているベンチャーやインターネット上でサービスを提供している会社、フリーのデザイナー、プログラマー、ライターなど「インターネット、ITに関連する業種」はすべて⑤の業種に含まれます。資本金3億、従業員300人以下という条件ですので、フリーランス(個人事業主)やベンチャーの場合、ほぼ確実に条件はクリアできます。ただしNPOは加入することができません。

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経営セーフティ共済の共済金、一時貸付金

受けられる共済金

経営セーフティ共済に加入していれば、非常に有利な条件で貸付けを受けることができます。共済金は「実際の損害額」と「掛金の10倍」のいずれか金額の小さい方の額が借りられます。担保なし、保証人なしで50万円〜8000万円の範囲で借りることが可能です。しかも以下のように返済期間は長めに設定されています。

5000万円以下:5年
5000万円〜6500万円:6年
6500万円〜8000万円:7年

そして貸付けは無金利です。ただし貸付けを受けた10%の額が掛金から控除され、その分の掛金は消滅します。つまり掛金500万円で共済金5000万円を借りると、掛金の500万円はなくなってしまいます。この10%分が利息のかわりということになるでしょう。計算すると実質的に金利は4%程度となります。実質的に無利息ではないため、貸付けを受けるときは本当に必要か慎重な判断が必要でしょう。

つなぎ融資には一時貸付金制度が有効

また取引先が倒産していなくても、自分の会社や事業が緊急の時には、一時貸付金制度を利用することができます。これは30万円以上で、掛金の最大95%まで借りることができる制度です。金利は0.9%と低いですが、返済期間は1年となっているため、資金繰りに詰まったときの緊急のつなぎ融資としての利用ができるようになっています。

節税対策としても使える

小規模企業共済のように、経営セーフティ共済も掛金を全額経費(損金)とすることができます。節税対策としてだけでも加入のメリットは高いでしょう。小規模企業共済と共に加入すれば、毎年かなりの額を経費計上して節税することができます。ただし節税効果には後述するようにデメリットがあります。

解約手当金をもらうときのメリット・デメリット

経営セーフティ共済は加入している限り、連鎖倒産を防ぐための共済金や緊急時の一時貸付けを受けることができるため、加入したらできるだけ加入し続けるべきです。しかし廃業したときや、資金がなくてどうしても解約しなければならない、ということもあると思います。そのようなとき、加入してから40ヶ月以上経過していれば、支払った掛金の全額を「解約手当金」として受け取ることができます。

ただしこの解約手当金は受け取ったときに全額が利益とみなされます。つまり全額課税されます。ということは、結局節税は一時的なもので将来のどこかの時点で、控除されていた分の税金を支払わなければならないということです。この点を節税効果という面で見ると効果はないと考えてしまいますが、税金の支払いを将来に繰り延べすると考えれば、別の使い方ができます。

例えば銀行からの借入があるため赤字を現状以上にしたくないが、節税も行ないたいというケースです。このようなとき決算前に共済に加入して掛金を前払し、その後赤字になりそうなときに解約して手当金を受け取り、それを益金として計上して赤字を減らす、などの使い方ができます。またフリーランス(個人事業主)ならば、所得額によって所得税率が変動します。そのため所得税が10%のときに掛金を支払い、その後収入が落ちてしまって所得税率が5%になってしまったときに解約すると、税率の差額分、お得になります。

経営セーフティ共済にはさまざまなメリットがあることが分かったと思いますが、一番の目的は自分の事業を連鎖倒産から守ることです。安定的に事業を行なうためにも、創業したらぜひ加入することをおすすめします。

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