ベンチャーはいかにして資金調達するのか?(下)どうしたら出資してもらえるのか

実際にVCから資金調達するにはどのような条件が必要なのでしょうか。
そもそもどのようなプロセスで出資してもらえるのでしょうか。

VCの仕組み

さて、前回はVCとはどのような特徴をもつものなのか、メリット/デメリットはどのようなものがあるのか、ご紹介しました。
それでは、もう少し詳しくVCの仕組みについてご紹介します。

VCから出資を受けるということはつまり、VCに株を保有されるということです。
そもそも株式とは、投資家から資金を調達し、その代わりに会社の資産の所有権の一部が株主のものになるというものです。
小さな会社ならば、自己資金で出資して、自分がオーナー社長として会社を支配することができるのですが、外部の投資家に株を発行するとその投資家が会社の一部を所有することになります。
VCは出資することで、会社の株=会社の資産を保有することになるのですが、VCは基本的に最後には、株を他の投資家に売却することでしか、利益を得ることができません。
VCがベンチャーに出資し、売却するまでのプロセスを少し詳しく解説しましょう。

新規株式の発行

まずは会社を立ち上げて事業をはじめる段階ですが、従来日本ではこの時期にVCから出資を受けることができるケースはあまり多くありませんでした。
一般的には最初は自己資金か、もしくは政府系機関からの補助金などを受けて創業していました。
しかし最近では、クラウドファンディングを利用して資金調達する方法や、最初からエンジェル投資家から出資を受けるベンチャーも増えてきました。

創業期に投資家から出資を受けることができれば、まずはその資金で共に事業を行う人材を取得することになります。
また、事務所や設備投資の資金も創業期の資金調達でカバーします。
こうしてVCなどの投資家から出資を受けることで、会社の資産の一部が投資家に保有されます。
自己資金が100万円、投資家からの出資が500万円ならば、600万円を資本金として事業を開始することができます。

事業拡大のためさらなる投資

事業開始後、さらなる事業の拡大のためにVCからさらなる出資を受けることになるでしょう。
日本のベンチャーの場合は、創業時よりも事業拡大期に出資を受けることが多いです。
こうしてさらなる出資を受けることで、VCなどの投資家にさらに株を発行します。
VCから2000万円の出資を受ければ、資本金は2600万円となり、投資家の株式の持ち分比率が高まるため、創業者の持ち分比率は下がります(希釈化)。
資金調達と希釈化は表裏一体ですので、持ち分比率が下がることは悪い状態ではありません。

EXIT(出口)

こうして調達した資金で事業を拡大させ、会社を成長させていくことで、企業の価値は上昇していきます。
しかし、この時点でVCなどの出資した投資家たちはまったく利益を得ていません。
そこで、ある一定のところまで会社が成長したところで株を売却して、利益を確定させます。
これをEXIT(出口)と言います。

しかし公開されていない会社の株は、そう簡単に売れません。
そこで、投資家/創業者たちは株を証券取引所に上場することを目標にすることになります。
上場することで誰もがその会社の株を売買できるようになります。
上場できるほどに成長した会社の価値は、創業時の何倍にもなっていますので、上場することで株価は何倍にもなるのが一般的です。
VCなどの投資家や創業者は、新規上場(IPO)することで、多額の利益を得ることができるのです。

しかしIPOすることができるのは、ほんの一部の会社です。
近年では少ない年で19社、多い年でも92社しか成功していません。
そのほかの会社は、M&Aを利用して会社を売却することで、創業者/投資家は売却益を得ることが多く、2000年代に入ってからはM&AがEXITの主流です。
ベンチャーはIPOよりもM&Aによる売却を目標にする方が現実的です。
これはVCが売却先の企業を探してきたり、M&Aの仲介会社を利用することで実現します。

このように、大きく3つのプロセスを経て、ベンチャーは資金調達し成長することができ、VCなどの投資家は利益を確定させることができるのです。

VCはどのような会社に出資したいか

さて、VCによる投資の仕組みについては理解できたかと思います。
しかし、どのような会社でも投資してもらえるわけではありません。
VCは当然利益を得ることを目的として、より成長の見込めるベンチャーに投資するのです。
どのような会社ならば、VCは投資しようと思うのでしょうか。

経営者の人間性

ベンチャー企業は、まだその実力や市場価値がまったく分かりません。
そのため、そのベンチャーの経営者/経営陣がどのくらいの実力を持つ人間なのか、これまでにどのような実績を持っているのか、人間として信頼できるか、その事業に対してどれだけの情熱を持っているのかといった広い意味での人間性で、まずは評価されます。

市場の成長性

また、当然のことですが事業の成長性を見て、その事業の実現可能性をもっとも重視します。
その際、その事業がどのような市場をターゲットにしているのか、その市場自体が成長しているのかどうかも、投資判断の条件に入ってきます。
すでに成熟している市場ならば、そこで新しくビジネスをはじめても成長性は見込めません。
成長している市場で、新規参入で収穫の見込める市場であることは重要です。

事業のオリジナリティ

どのような画期的なビジネスにも、競合する会社/商品/サー−ビスは必ず存在します。
その際、その競合と戦えるだけのオリジナリティがあるか、競合とどれだけ差別化できるかが重要です。
競合と戦えない、戦えても大きく差別化することができないビジネスならば、高い成長が見込めないからです。

VCは常に情報収集して、複数のベンチャーを投資対象として見ています。
VCが自身で投資対象となりそうなベンチャーを探すこともありますし、ベンチャーの側から出資を求めてくるケースもあります。
VCから資金調達したいならば、常にこうした複数の他のベンチャーよりも魅力的な会社であることがアピールできなければなりません。
その上で条件となるのが、経営陣の人間性、市場の成長性、事業の独自性の3つなのです。

VC以外にも資金調達の方法はいくつもある

ここまで、ベンチャー企業の資金調達の方法としてのVCからの出資の仕組みやそのメリット/デメリット、必要条件などをご紹介しました。
VCからの出資はそのビジネスに高い魅力がある必要性や、経営に口を出されるというデメリットも存在するのでした。
またVCから出資を受けるためには、さまざまな準備も必要です。
資金調達としてVCを利用することは、事業に対して大きな情熱やパワーがなければならないことを前提に検討することが必要ですね。

補足になりますが、そもそも資金調達の手段はVCだけではありません。
政府の補助金を利用しての資金調達も、大きな魅力があります。
得られる額は小さくても、返済義務がなくVCからの調達よりは条件も厳しくありません。
政府の補助金については以前にanywherに記事を掲載しておりますので、参考にしてみてください。

スタートアップ資金調達方法 補助金編

政府からお金を借りる公的融資制度についても、以前解説しておりますので参考にしてみてください。

スタートアップ資金調達方法 公的融資制度編

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