創立費・開業費の節税対策

開業にかかる資金には「創立費」と「開業費」があります。
今回は、どこまでが創立費・開業費に含まれるのか、これらにはどのような特性があるのかを簡単に解説します。

創立費と開業費

これから開業するという人は開業の準備に意外とお金がかかることに驚くかもしれません。
開業準備にかかるお金には、会社の設立手続きを行なうまでにかかる「創立費」と、会社の設立手続きを行なってから実際に営業を開始するまでにかかる「開業費」とがあります。
会社の設立手続きとは、法務局で行なう「登記」のことです。
登記までにかかる「創立費」は、主に登記関連の費用になります。
例えば、定款をつくる費用、登記時にかかる登録免許税、手続きを依頼した行政書士や税理士への報酬などです。
登記してからかかる「開業費」は創立費よりも多くのお金がかかり、主に広告宣伝費、打ち合わせ費用、デザイン料などです。
よくゼロ円で株式会社の設立ができると言われますが、最低限必要な創立費・開業費にプラスして、数ヶ月分の会社の運転資金を確保しておく必要があるため、トータルでは最低でも300万円〜500万円、できれば1000万円以上資本金として準備しておく必要があります。

創立費・開業費は黒字期に繰延資産として任意消却

創立費・開業費はすべて「繰延資産」として処理することになります。
繰延資産とは、1年以上の長期にわたって支出した効果が継続するような支出のことです。
登記費用や広告宣伝、事業のための打ち合わせなどの支出はこれからの事業を支える支出であるため、1年以上効果が続くと考えていいでしょう。
また、創立費・開業費は繰延資産として「任意消却」することが認められています。
そのため、支出は数年に分けて自由に費用にすることができます。
例えば1年目が赤字になってしまったら、その年に創立費・開業費をすべて費用として計上すると節税効果がありません。
1年目が赤字で2年目、3年目が黒字ならば、2年目と3年目にわけて創立費・開業費を損金計上することで、節税効果を高めることができます。

創立費・開業費の範囲

開業費は繰延資産として任意消却できるため、節税にあたっては非常に使い勝手の良い項目です。事業を始めるには多額のお金がかかるため、できるだけ多くを開業費に入れたいというのが本音でしょう。ただし、開業にあたってかかった費用のすべてが繰延資産として計上できるわけではありません。
そこで、どこまでを開業費にしていいのか、という点が重要になります。
開業費の範囲は明確には決められておらず、常識の範囲内で決められることになります。
しかし、一般的には、まずは以下の条件にあてはまるものになります。

  1. 開業のためにかかった費用であることがきちんと説明できる支出である
  2. 開業準備のためにかかった費用であり経常的な支出ではない

書籍やセミナー費用

営業開始前に仕事のスキルを高めるために、勉強用に購入した書籍やセミナー費用は事業に直接関係があることを証明するのが難しいため、開業費に入れるのは難しいです。

サイト作成のソフト購入費と通信費

事業用の自社サイトを作成するのにかかったソフト購入費や通信費は、事業に直接関連するため、開業費として計上することができると考えていいでしょう。

打ち合わせ費用

事業開始のための打ち合わせにかかった費用も、開業費に入れることができると考えられます。
しかし、この打ち合わせが、開業の1年前に行なわれていた場合は、例え事業に関連する打ち合わせであっても、微妙な範囲になってきます。
営業の1年以上前の打ち合わせが事業に本当に必要なものか証明するのは難しいからです。
これは開業費には入れない方がいいでしょう。

そして②についてですが、開業費に入れることができるのは開業準備のために特別に行なった支出である、ということになっていますので、経常的な支出である光熱費や事務所の賃料、従業員の給料などは含まれません。
よくネット上の解説サイトでは賃料や光熱費、消耗品代、備品代なども含まれるように書かれていますので、注意が必要です。
どこまでを開業費に計上するかはケースバイケースにはなりますが、上記のポイントを押さえていれば判断することは難しくありません。

開業費の会計処理

開業にあたっての支出は登記前までにかかる支出である「創立費」と登記後にかかる支出である「開業費」に区別されると書きました。
会計上、創立費は「営業外費用」として、開業費は「営業外費用」もしくは「販売費及び一般管理費」として処理します。
消耗品や備品は開業費には含むことができないと書きましたが、パソコンやプリンタなど10万円以上の備品は「固定資産」として計上して、減価償却することができます。
また10万円以下の備品は消耗品費として計上することができます。

開業費の処理はよく検討してから

このように開業費に入れることができる費用は、範囲が限定されています。
開業費の処理はまだ慣れないうちの作業になるため、よく調べて、できれば専門家に相談しながら作業した方がいいですね。
開業費を上手く処理するために、開業前にその特性をよく把握しておきましょう。

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