「はじめての決算」決算月に慌てないための対応策

「決算」とは、年に一度会社の成績を評価する作業のことです。しかし、起業して今回がはじめての決算であるという方は、何をすればいいか分からないのではないでしょうか。今回は決算のときにやるべきことをまとめました。

決算でやること

決算とは一年間の会社の成績を自己評価するものです。具体的には以下のことを行う必要があります。

1. 現金の残高と出納帳との整合性確認

まず決算のときは現時点でのキャッシュを把握する作業を行います。そのためには銀行に残高証明書を請求しそして銀行の残高と帳簿の整合性を確認します。このときに整合性を確認する帳簿は「現金出納帳」です。

帳簿には決算書作成のために作成する「仕訳帳」「総勘定元帳」という主要簿以外に、「現金出納帳」という重要なものがあります。これは現金の出入りを記録する、補助的な帳簿のことで、いつどのようなことに、どれだけの現金を使ったかを記録します。家計簿の延長と考えていいでしょう。この現金出納帳と残高証明に記録されているキャッシュの額とを照らし合わせ、過不足が生じていないか確認します。過不足があれば「雑収入」「雑損失」で処理しましょう。

2. 買掛金・売掛金の確認

現金で商売するB to Cの会社以外は、一般的に取引の大半は掛金で行っていると思います。そのような場合に、どうしても回収できない売掛金が出ることがあります。回収できていない売掛金がれば、もう再請求してみましょう。回収不能債権が多すぎれば、経営を圧迫してしまいます。どうしても回収が困難という売掛金に関しては、貸倒れとして処理しましょう。

3. 帳簿の整理

決算期には決算書の作成をしなければなりませんが、このときに領収書を整理しましょう。決算書に記入している項目が本当に存在するものなのか、税務署から突っ込まれたときに答えられるように、領収書が存在することを確認します。

決算期にやることをまとめた記事などを見ると、棚卸しがあげられていることが多いですが、クリエイター系の職種ならば、在庫を持たないことが一般的ですので、棚卸しは基本的に必要ありません。

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会社のためになる4つの節税対策

多くの企業では、決算期に節税対策を行うことで法人税の納税額を減らそうと努力します。またネット上でもそのようなことが書かれた記事が多く見られます。節税対策はどのような企業にとっても重要なことですが、しかしやみくもな節税対策は会社にとって害悪になってしまいます。なぜならば、節税対策の多くは経費=会社のお金を使って利益を圧縮することで納税額を減らす、というものであるためです。

後々会社にとっての利益に貢献するような投資ならばいい節税対策と言えますが、単純に黒字を減らすために行う、行う意義の曖昧な節税対策は、おすすめしません。有効な節税対策が行えないならば、税金をちゃんと払って内部留保をためる方がよっぽど有効です。

それでは有効な節税対策とはどのようなものでしょうか。

1. 決算賞与

決算期に行う節税対策として代表的なものは「決算賞与」でしょう。利益が大幅に上がったために税金が増えてしまった場合、決算の前後に「決算賞与」を出すことで、決算賞与として出した分の額を、損金に計上することができます。決算の時点で未払いであっても、一定の要件を満たしていればその決算期の損金として計上することができます。賞与は会社のその後の利益に直結する投資などとは異なりますが、社員のモチベーションアップにつなげることができるという点で、会社のために有効な節税方法の一つと言えるでしょう。

2. 共済への加入

企業経営者が加入するべき共済として、「経営セーフティ共済」「中小企業退職金共済」の2つがあります。経営セーフティ共済とは取引先の倒産からの連鎖倒産を避けるための共済で、中小企業退職金共済とは、事業主が契約者となって従業員の退職金を積み立てる共済です。これらの共済の掛金は損金算入することができます。また、1年分の掛金をまとめて支払うことができますので、これまで加入していなかったという経営者の方は、決算月に加入しまとめて掛金を支払うことで、その決算期の黒字を縮小し納税額を小さくすることができます。共済は長期加入することが前提になりますが、会社や従業員の将来のためになるものであるため有効な節税対策です。

ただし、この①と②の節税対策は、その決算期のみに有効なものです。決算賞与を払うと従業員は来年もあるのではないかと考えるようになりますし、共済にいたっては一度加入すれば、その後は決算期に黒字を圧迫するという使い方はできなくなります。つまりこれらは一時的な節税対策なのです。しかし、③と④で紹介する方法は、毎年使うことができます。

3. 30万円未満の少額減価償却資産の購入

中小企業の場合は、10万円未満の減価償却資産を購入した場合、費用を一度に損金として計上することができます。また、10万円以上30万円未満の資産を購入した場合、一括償却か分割しての償却かを選択することができます。もしも将来的に必要になることが見込まれる設備・備品などがあれば、その決算期の間に購入してしまえば黒字を縮小させて、法人税納税額を小さくすることができます。投資にも節税にもなるという非常に有効な方法です。

4. 予定する支出の先払い

たとえば決算を行うのが3月であった場合、4月以降に支払いが決まっている支払いを先に行うことで、急に発生してしまった黒字を縮小させることができます。ただし支払いを先にしてしまえば、当然次の決算期の分の損金参入できる額がその分小さくなってしまいますので、この点は気をつけなければなりません。

今回は決算のとき行う最低限のことと、急に黒字が増えたときに対応できる節税対策についてご紹介しました。ただし、いざ決算をするとなったときに慌てないためには、日常での継続的なお金の出入りの管理や取引先との密な連絡が重要です。小さな企業ならば、決算の作業はそこまで複雑にはなりません。普段からこのような作業を怠らなければ、決算だからと大変な思いをすることはないでしょう。

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