何歳までに起業するべきか?

若き起業家の成功

2014年フォーブス世界長者番付・億万長者ランキングで1位に帰り咲いたビル・ゲイツは、1975年ハーバード大学在学中に友人と共にマイクロソフトを創業。
21位にランクインしたFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグも同じく2004年にハーバード大学在学中に学生の友人らと共にFacebookを創業。

日本の最高位は42位のソフトバンク孫正義社長。
孫社長がシャープに自動翻訳機を提供し、それで得た1億円の資金を元手に米国で起業したのがカリフォルニア大学在学中の22歳の時。

2000年、株式会社サイバーエージェントの藤田晋社長は、24歳で起業し、26歳で当時最年少で東証マザーズに上場。

2011年には、19歳で株式会社リブセンスを起業した村上太一社長が、25歳と1ヶ月の若さで東証マザーズに上場を果たし最年少記録を塗り替えたのも記憶に新しい。

若くで起業したほうが成功するのか?

若くで起業したIT社長に注目があつまるが、果たして何歳で起業するべきなのか。
若いうちは、発想が豊かで、恐れることなく何事にもトライできる。

一方、大学卒業後に数年間、いくつかの会社で社会経験を積み、人脈を広げた後の方が堅実だとも思える。

そこで、とても興味深い海外の記事を見つけたので紹介したい。

How Old Is Too Old to Start a Business? The Answer May Surprise You. – ビジネスを始めるのに遅すぎるのは何歳から?その答えにあなたはきっと驚く!

このインフォグラフィックは、グラフの緑の部分が学び始める前の期間紫の部分が学び始めてからの期間オレンジの部分が成功してからの期間が記されている。

TOO LATE TO LEARN? Late Bloomers Who Succeeded Despite Their Age 学ぶには遅すぎる?遅咲きの成功者達

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出典:entrepreneur.com

It’s Never too late to learn.学ぶのに遅すぎることはない。

学び始める前と成功の定義に対する疑問

人生はまさに、生涯学習であると思う。
このまま歳をとっても常に新しいことに挑戦したい。
「学ぶのに遅すぎることはない。」とても素晴らしい言葉だ。

しかし、この言葉とインフォグラフィックから読み取れるのは、(若者に対し)「(今、学んでいなくても大丈夫)学ぶのに遅すぎることはない。
(遅咲きの先人たちも挑戦することと成功するのは遅かったのだから)」というメッセージである。

本当にそうなのだろうか。
そこで、いくつかの疑問が生まれた。
このインフォグラフィックでは、何をもって成功としているのか。
彼らは、「学び始める前」の期間は、何をしていたのか。
学び始めるまで、特に努力もせずに平々凡々な暮らしをしていたのだろうか。

インフォグラフィック内で唯一の日本人であった、安藤百福について簡単に調べてみた。

安藤百福 日清食品株式会社創業者

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安藤百福
インスタントヌードルの生みの親
48歳まで塩を売っていた。刑務所にいた。
48歳から学び始め、61歳から成功。

安藤百福の軌跡 0歳〜48歳

1910年(明治43年)
台湾に生まれる。両親を幼少期に亡くし、台南市の祖父母のもとで育った。

1932年(昭和7年)
22歳のとき繊維商社「東洋莫大小(とうようメリヤス)」を設立。

1933年(昭和8年)
事業が成功し、大阪市に日東商会を設立、貿易業を開始。
光学機器や精密機械の製造、飛行機エンジンの部品製造などにも事業を拡大する一方、立命館大学専門学部経済科(夜間部)で学んだ。
国から支給された部品の横流疑惑で、憲兵隊本部へ連行され、数々の拷問を受けた後、無罪釈放された。

1945年(昭和20年)
第二次世界大戦、大阪大空襲によって全ての事務所や工場を焼失した。
戦後すぐ、大阪で百貨店経営を手始めに事業を再開。

1946年(昭和21年)
失職中の復員軍人や若者に仕事を与えるために製塩事業を開始。
病人用の栄養食品を開発する「国民栄養科学研究所」を設立。
「中華交通技術専門学院」を設立して技術者の育成に努めた。
当時、塩は国の専売制ではなく、自由に作ることができた。
とれた塩は主に近隣の人たちに配った。
働いた若者たちには給料ではなく小遣いを支給したが、これがGHQの目に留まり、所得税法違反に問われる。
GHQに脱税容疑で逮捕される。
戦争犯罪人の収容施設である、巣鴨プリズンに収監される。
弁護団を結成し2年間法定で戦った後、無罪釈放となった。

1948年(昭和23年)
「中交総社」を設立。

1958年(昭和33年)
10年間の休眠状態を経て、48歳のとき現在の「日清食品」の母体となって復活する。

参考元:安藤百福 – wikipedia

この48歳までの壮絶な人生を「学び始める前」と呼ぶのはいかがなものか。
“Until 48 sold salt, was in jail” なんて言葉で言い表せる人生ではない。
敗戦後の何も無いゼロの時代と、可能性が無限大に広がるデジタルネイティブの現代を比べることすらナンセンスである。

未だに成功の定義が曖昧なままだが、ここに書かれている安藤百福が成功した61歳とは、カップヌードルが発売された時の年齢である。
しかし、実際には、安藤は22歳の若さで起業しているうえ、カップヌードルが発売される前も、チキンラーメンが大ヒットしている。
シンプルにビジネスの成功という意味では、22歳の頃を指すべきである。

つまり、このインフォグラフィックは「安藤百福の成功」ではなく「インスタントヌードルが発売された年」と言えよう。

リード・ホフマン LinkedIn創業者

安藤百福は偉大な経営者だが、時代的にも、本田宗一郎や松下幸之助の歴史を学んでいるような感覚になる。
経営精神を学ぶ教科書としては、とても参考になるが、現代のビジネスにマッチした、実践的な参考書とは言い難い。
そこで、同じ時代に生きる、IT企業の成功者として、とても興味深いリード・ホフマンについても少し調べてみた。

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起業家
30歳まで一度も起業していない。
30歳から学び始め、35歳から成功。

リード・ホフマンの軌跡 0歳〜35歳

1967年
アメリカ、カリフォルニアで生まれる

1990年
象徴システムと認識科学の理学士号を得てスタンフォード大学を卒業。(マーシャル奨学金とディンケルスピーエル賞を受賞)

1993年
哲学において博士号を得るためオックスフォード大学へ進学した。

1994年
アップルコンピュータに入社

1996年
Fujitsuに勤務

1997年
SocialNet.comを共同開設

1998年頃
ペイパルマフィアの一員になる

2000年
SocialNetを辞め、Paypalの最高執行責任者としてフルタイムで常勤となる。

2002年
ビジネス向けのSNS、LinkedIn創業。

インフォグラフィックの成功の歳である35歳までをザッと書き出したが、特に細かく説明する必要もないだろう。

35歳は「リード・ホフマンの成功」ではなく「LinkedInの創業」の年だ。
30歳までが「学び始める前」の期間となっているが、アップルコンピュータに入社している時点で、誰もが羨むキャリアを手にしている。
創業社長になることだけが、ビジネスの成功ではない。

彼のような天才であれば、起業しなくとも引く手数多だろう。
世界をリードするIT企業が、喉から手が出るほどスカウトしたいに違いない。

参考元:リード・ギャレット・ホフマン – wikipedia

SPONCER

何歳までが若いのか

先ほどのリード・ホフマンのインフォグラフィックでは“until 30 never started companies”と書いてあるが、正直、30歳での起業でも十分若いと感じる。

では、若いとはいったい何歳までを指すのだろうか。

そこでIT起業家の創業時の年齢を調べてみたが、有名なIT起業家はみなこぞって35歳までに起業しており、40代や50代ではじめて会社を設立するような例を、見つけることができなかった。

IT業界以外であれば、35歳を超えた後に起業し、成功した人もいるが、業界や起業した歳とは関係なく、共通して言えることは、起業する前も絶えず努力してきているということ。
つまり、「(今、学んでいなくても大丈夫)学ぶのに遅すぎることはない。(遅咲きの先人たちも挑戦することと成功するのは遅かったのだから)」というメッセージは、ミスリーディングだと思う。

何歳までに起業するべきか

シリコンバレーでは、35歳までに独立するか企業で出世していないとダメだという目安があるらしい。
IT企業の成功者を例にするのであれば、「35歳までに起業」は、あながち間違いではないと思う。
一方、定年退職後に起業するシニア起業家も増えつつある。

いくつになっても、起業することは可能だが、そのシニア起業家が時代を牽引しているというニュースは今のところ耳にしていない。
もし、日本を代表するIT企業を目指すのであれば、35歳までに起業するのを目標にするのはいかがだろうか。

SPONCER
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