起業のための「契約書」の基本

ビジネスを行なうと必ずなんらかのトラブルに巻き込まれることがあります。そのようなときに効果を発揮するのが「契約書」です。契約書に関する知識をちゃんと持っているか、契約書をちゃんと読んでいるかがリスクを回避するのに非常に重要になります。今回は起業したら必ず必要になる契約書の基本についてご説明します。

契約書とは

そもそも契約書とは、取引する当事者が誰であるか、いつまでの契約なのか、権利関係はどのようになっているかなどの取引するうえでの約束事を明確に記した書類のことです。フリーでリモートワークをやっている方は、自分で書くよりも、クライアントから送られてきたものを確認することが多いかもしれませんが、起業すると自分で作成する機会が増えてきます。確認する場合には、どのような契約になっているのかをちゃんと確認すること、自分で作成する場合には穴のない内容にすることが重要になりますが、それを軽視するとトラブルの原因になってしまいます。無用なトラブルを回避するためにも、契約書の基礎知識とポイント、契約書を使った取引の流れを知っておくことが必要です。契約書には主に以下の効果があります。

  • トラブルの未然の回避、予防
  • 発生してしまったトラブルの早期解決

大きな会社や製品を作成して販売する会社では、契約書は複雑な内容になり、チェックポイントは多数あります。契約相手も材料の仕入れ先から製品の納入先まで多く、1つ1つに受注数や製品の品質など細かい点を明記しなければならないからです。しかしクリエイターの場合は一般企業がかわす契約書とは異なる内容になります。まず契約書の基本的のポイントは、簡単には以下の3点です。

1. 誰と誰の契約なのか

まずその契約は誰と誰の契約なのか、契約の当事者を明確にしていることが契約書を読む・書くうえでのポイントです。フリーランス(個人事業主)ならば、自分個人と取引先の会社との契約なのか、個人と個人の契約なのか、よく確認しましょう。自分が作成する側の場合も同様です。そのうえで、契約当事者の署名+捺印をします。本来ならば直筆で署名し、認め印もしくは、実印を使うことが望ましいですが、簡単な契約ならば省略されることも多いです。せめて当事者関係を明確にしていることを最低限チェックしておきましょう。

2. 契約の期限

また契約がいつからいつまでのものなのか、契約の有効期限を定めておくことも重要なポイントです。記入するべき期限は「契約の有効期限」の他に「仕事の納期」「報酬支払日」などもしっかり記入しておきます。

3. 契約の義務関係

そしてどのような仕事に対していくらの対価が支払われるのか、という仕事内容の義務関係を記入します。これがもっとも重要なポイントです。納入するモノ・サービスはどのようなものなのか、契約違反の基準はどこにあるのか、違反した場合はどのような処置がとられるのか、などです。自分が契約によって何をするのか、いくら払う・もらうことになるのかを明確にします。

ここまでは一般的な契約の内容にも当てはまる基礎的なことですが、クリエイターの場合、押さえるポイントはこれだけではありません。
ライター、デザイナー、プログラマーなどの職業で必ずチェックが必要になるのは、著作権の権利関係についてです。

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クリエイター職では著作権が重要

クリエイターの仕事の多くには著作権が存在します。そのため何が著作物なのか、著作者は誰か(個人か企業か)、著作権は誰のものになるのかを明確に定めておく必要があります。

クリエイターと一括りに言っても、出版業界で仕事をするライター、デザイナー、フリーの編集者などの場合は正確な契約書がかわされないことの方が多く、何が著作権なのか、誰が著作権を持つのか、あやふやなことが多いです。一方でIT関連業界では契約書で著作権関係のことも明らかにする傾向にあります。特にウェブ媒体で仕事をしている場合は、ウェブメディアの記事作成や写真撮影、イラストの作成などの仕事でも、著作権の権利関係は明記されるのが一般的です。紙媒体の雑誌や書籍の作成などに関わる仕事では、契約書で著作権の権利関係を明確にすることは難しいかもしれませんが、ウェブ媒体で仕事をする場合は、著作権の権利関係をしっかりチェックするようにしましょう。ポイントは以下の3点です。

  1. 何が著作物となるのか
  2. 誰が著作者なのか
  3. 著作権は誰のものになるのか(著作権の利用・譲渡)

①は言うまでもありませんが、その仕事において何が著作物となるのかということです。
そこで特定した著作物について、②著作者は誰なのか(クリエイター個人か企業か)を明確にします。
そしてもっとも重要な点が③著作権が誰のものになるのか、です。著作権の関わる契約書には、必ずこの条項があり、制作者はその点をよくチェックし、受注者は必ず明記するようにしましょう。この点があいまいだとトラブルの原因となります。③については、以下の2つのパターンがあります。

  1. 著作者(つまり制作者)に権利を残して利用のみを許諾する場合
  2. 著作権をすべて譲渡する場合

1のケースならば著作物の利用を許諾する期間、契約違反した場合の処置なども明記します。多くのクリエイターの仕事は2のケースが多いのですが、この場合は契約書に権利のすべてを譲渡する旨を明記します。また違反した場合の処置や、必要ならば二次利用するときの規約等も記入します。クリエイターは著作権を譲渡するつもりがなくても、2の文言が記入された契約書を許諾してしまうと、もう著作物は相手のものとなってしまいます。しっかりチェックして、譲渡するつもりがないならば、はっきり契約の変更を依頼しなければなりません。

最後に、必要ならば「秘密保持」についても契約書に明記しましょう。例えば新しいウェブメディアの開設や、未発表の企画など、秘密裏に進めているプロジェクトに関する仕事のケースです。社内では社外秘として進めていても、下請けや仕事の外注先の人間が、SNSなどネット上で漏洩させてしまうことが多々あります。このような場合の処置を明記しておけば、秘密が漏れるリスクを未然に抑えることができます。

もう一度契約書の重要性を認識しよう

多くのクリエイターの方は契約は簡単に済ませて、信頼関係のうえで、仕事を進めているという実状もあります。しかし、せっかく築いてきた信頼関係も1度のトラブルで壊れてしまうことがあります。仕事を円滑に進めるために、あらためて契約書をかわす重要性を考え直してみてはいかがでしょうか。

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