個人事業主・経営者には必須の「資金繰り」の仕組みの知識

すべての個人事業主・経営者に必要不可欠の知識が「資金繰り」の仕組みと対策です。これはいくつかのポイントから理解すれば、難しいものではありません。対策を怠らなければ「黒字倒産」という最悪の事態は避けることができます。今回は、資金繰りの仕組みと対策について解説します。

「勘定あって銭足らず」はなぜ起こる?

多くのフリーランス(個人事業主)の方や起業したばかりの経営者の方は、資金繰りの実務を独自の方法で実践していると思います。資金繰りは専門知識が必要とされる作業ですが、実際に事業をはじめるとそんなことを学ぶ時間の余裕はありません。本業のことで手一杯となるでしょう。そのため多くの方は経験の中で、自分で考えながら独自の方法で資金繰りしているのが現状です。

しかし、正しい知識を欠く資金繰りは「黒字倒産」、いわゆる「勘定あって銭足らず」といった状態を招くことになります。リーマンショックが起こった2008年は、戦後でもっとも上場企業の倒産数が多い年となってしまいましたが、倒産企業の6割が黒字倒産だったのです。黒字倒産とは、売り上げ・利益が上がっているにもかかわらず、資金不足となって倒産してしまうというケースです。専門的な財務・経理の従業員のいる大企業ならば、資金繰りで失敗することは少ないですが、高度な知識・スキルを持たない中小企業は、経済の変動や本業でのイレギュラーの発生から、気がついたら黒字倒産、というケースがあり得るのです。

黒字倒産の仕組みは、たった3つのポイントを押さえることで理解することができます。

1. 売り上げは「発生主義」=売り上げと入金にはタイムラグがある

2. 「運転資本」がなければ倒産する

3. 売掛金を回収できるのは最後

売り上げがあがっていても会社が倒産するのは、「支払ができなくなるから」です。そして支払ができなくなる状況が発生するのは、帳簿上のお金の動きと実際のお金の動きにはズレが生じているからです。売り上げは発生主義に基づいているため、モノ・サービスが売れた時点で売り上げに計上されます。しかし、実際にそのモノ・サービスの対価が支払われるまでは、ある程度時間がたってからであるケースが多いです(現金で売り上げる事業以外)。このお金の出入りの帳簿と実際の動きのズレを把握できていないと、売り上げがあっても支払いができないという状況が発生してしまいます。

また、すべての事業には「運転資本」が必要とされます。運転資本とは「売上債権+在庫—買入債務」のことです。すべての事業は、まずモノ・サービスを創出するために仕入れを行い、その後に製造し、それを販売してお金を得る、というのが大きな流れになります。つまり、簡単に言うと先に仕入れのためのお金を支払い、モノ・サービスを販売して売掛金を回収した時点で、やっとお金が回収できそれが利益になるのです。通常、このサイクルを繰り返すことでビジネスが行われます。

クリエイター系の職種の場合は、材料費などの仕入れは必要ないため関係ないと考える方も多いかもしれませんが、実はそうではありません。完全に1人で仕事を完結させるならば別ですが、たとえば1つのプロジェクトを遂行するためにデザイナーやプログラマーに仕事を外注した場合、彼らがそれぞれの仕事を納品したら報酬を先に支払う必要があります。しかし、その段階ではまだモノ・サービスを販売して売り上げを上げているわけではありません。売り上げが得られるのはモノ・サービスが売れるという、ビジネスのサイクルの最後の段階であり、さらに売掛金が得られるのはさらに後のことです。さきにお金が出ていき、あとからお金が入ってくるため、ある程度運転資本という余裕がなければ、ビジネスは行えないわけです。

問題はここからです。1つのプロジェクトのみを行っているのならばいいですが、実際には複数のプロジェクトを同時進行している方が多いのではないでしょうか。そうなると、上記のサイクルが同時並行的に複数回転させることになります。複数のプロジェクトを同時並行で行うと言うことは、それだけ報酬の支払いも売掛金の回収も、複数のタイミングで行われることになります。これが問題なのです。タイミングがずれて報酬の支払いが何度も連続すると、運転資本がゼロになり、資金がショートするのです。特にビジネスが好調になって売り上げが増え始めたときに発生しやすくなります。以上が「黒字倒産」のメカニズムです。

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資金繰りが滞ったときの問題

資金繰りが滞ると最悪の場合倒産してしまいますが、その前に以下のような問題が発生します。

取引先にお金が支払えない

A、Bの2つの仕事を同時に遂行していると仮定すると、Aの売掛金の回収が遅れたためにBの仕事で外注した支払いを行うことができない、ということが起こりえます。そうなればBの取引先からの信用を失うでしょう。個人事業主や小規模な企業の経営者である場合、取引先の数はそんなに多くないはずです。その取引先から信用を失えば、ビジネスの規模が大幅に縮小してしまうかもしれません。

銀行の信用を失う

支払いが遅れれば銀行の信用を失うことにもなります。個人事業主や小規模な会社に対しては、銀行は特に厳しい対応を取ります。債務の返済が滞れば、銀行の条件は厳しくなるか、もしくはその後融資を断られるようになるかもしれません。

事業の回転が止まる

複数の仕事を同時並行的に推進していて、資金繰りが滞ってしまった場合、新たな投資ができないために業務の規模を縮小しなければならなくなります。これまでA、B、C、Dの仕事をしていたのに、支払いが行えないためA、Bのみに縮小ということがあり得ます。業務規模が小さくなれば当然売り上げも減るため、次の投資を行うことができなくなり、事業の縮小サイクルに入ってしまいます。小規模事業者にとって、これは大きな問題です。

これら3つに関連する問題の発生が、黒字倒産につながってしまうのです。

黒字倒産を防ぐための対策

このような黒字倒産を防ぐためには、正しい資金繰りの知識を得ることと、買掛金・売掛金の管理を神経質になるくらい、しっかりと行うことが重要です。しかし、そのほかにも対応の方法があります。

取引先の支払い能力を評価しておく

もしも取引先に、ときどき売掛金の支払いが遅れるところがあれば、その取引先との仕事をするときには、運転資本に余裕を見ておくことが必要でしょう。もしも入金が遅れても資金繰りに影響しないようにしておくのです。金融機関は格付け機関から、細かい格付けが行われますが、フリーランスの方や経営者の方も、取引先を自分なりに格付け評価しておくことをおすすめします。

融資してもらう

対策というほどのものではありませんが、資金繰りがショートしてしまいそうになり、すぐにお金が必要となれば銀行や日本政策金融公庫などから、お金を借りる必要がります。おすすめは、「小規模企業共済」に加入しておくことです。小規模企業共済とは、個人事業主や小さな会社を経営する経営者が、自分の退職金を準備するために加入する共済です。この共済には「契約者貸付制度」があります。これは共済の契約者は、払い込んだ掛け金の範囲内で事業資金の貸し付けを、無担保・無保証で受けることができるという制度です。また中小企業の資金繰りに対応する助成金・補助金を利用するのもいいでしょう。中小企業庁のサイトから探すことができます。

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