会社員をやめて独立し、フリーで働くようになると、国民健康保険の保険料を全額自分で負担しなければなりません。この負担額に驚く人も多いです。しかしデザイナーやクリエイターなどの職種の方は文芸美術国民健康保険に加入することで、国民健康保険の保険料を少なくできる可能性があります。
文芸美術国民健康保険とは
日本に住んでいて働いているみなさんは、全員必ず健康保険に加入しなければなりません。しかし会社に勤めている方は、会社が健康保険の手続きを行なってくれますので、健康保険の負担や手続きのことを考える機会は少ないですね。しかし独立してフリーになった場合、自分で国民健康保険に加入するか、もしくはその他の国民健康保険組合の運営する健康保険に加入することになります。会社員は保険料の半額を会社が出してくれますが、フリーの場合は全額自分で出さなければなりません。
そんなフリーの方は、文芸美術国民健康保険に加入すると保険料が安くなる可能性があります。文芸美術国民健康保険、通称「文美国保」とは文芸、美術、映画などの分野でフリーで働く人を対象とした健康保険の組合で、作家や漫画家、写真家、美術家はもちろん、ウェブデザイナーやプログラマー、イラストレーターなども加入することができます。メリットとしては「収入によっては保険料が安くなる」という点で、デメリットとしては「加盟団体に加入する必要がある」点です。
保険料が一律!
文美国保に加入するメリットは「保険料が一律」という点です。国民健康保険は過去1年の所得によって保険料が変動します。しかし文美国保の場合は、年間「20万2800円(月額1万6800円)」(平成27年度の保険料)と一律で決まっており、多く稼いでも保険料は変動しないのです。家族の保険料は1人あたり「10万4400円(月額8700円)」で、満40歳〜64歳の被保険者の支払う介護保険料は1人あたり3600円です。どのくらい安くなるのかシミュレーションしてみましょう。
- 被保険者:35歳男性
- 職業:フリーデザイナー
- 家族構成:独身
- 賦課標準額:400万円
賦課標準額(ふかひょうじゅんがく)とは前年度の売上から必要経費と所得控除を差し引いた額です。国民健康保険の保険料は住んでいる自治体によって異なりますが、例えば東京都新宿区の場合、この条件では「23万8483円(月額1万9874円)」となります。よって、このケースでは文美国保に加入した方が安くなります。賦課標準額が300万円の場合はどうでしょうか。この場合、東京都新宿区での社会保険料は「17万5509円(月額1万4626円)」となって、文美国保の保険料の方が高くなってしまいます。つまり所得が低いならば損する可能性があり、所得が多ければ多いほどお得になるのが文美国保の特徴です。
加盟団体に加入するのが前提?
ある程度稼いでいる人にとっては文美国保には大きなメリットがあるのですが、文美国保は誰でも利用できるものではなく、文美国保の組合に参加している団体に加入していなければ利用できません。加盟団体は多くありますが、例えば「日本ネットクリエイター協会」「日本グラフィックデザイナー協会」「日本アニメーション協会」などがあり、それぞれ文芸、美術、映画、デザイン、コピーライティングなどの専門的な団体が加盟しています。
加盟団体一覧:http://www.bunbi.com/dantai.html
「じゃあまずこの団体に加入すればいいんだな!」と思うかもしれませんが、これらの団体に加入するためには、それぞれの団体の定める条件をクリアし、団体から加入が認められる必要があります。また加盟団体の入会金、年会費も必要です。例えば日本イラストレーション協会ならば推薦なしで加入できますが、ウェブデザイナーなどの職業を専門的に行なっていることが条件になります。年会費は2万4000円です。日本グラフィックデザイナー協会の場合は会員の推薦が必要で、さらにグラフィックデザイナーとして2年以上実務経験がある、などの条件があります。年会費は3万6000円です。
文美国保の保険料は平成27年度は「20万2800円」ですが、まだ団体に加入しておらず、これから健康保険の保険料を安くするために団体に加入したいという人もいるかもしれません。そのような人はその団体の年会費を文美国保の保険料にプラスしても、文美国保の方が安くなるのかを計算してみることをおすすめします。仮に団体の年会費が3万円ならば、国民健康保険の保険料が23万2800円以上にならなければ、お得にはなりません。また多くの団体では初年度に出資金や入会金が求めれるため、それも計算にいれる必要があります。ちなみに国民健康保険の保険料は以下のサイトで計算することができます。
国民健康保険計算機:http://www.kokuho-keisan.com/
条件があっていればとてもお得
文芸美術国民健康保険がもっともお得に利用できるのは、家族がいない独身者で、かつ収入の多い方です。家族が多い場合は向いていないこともあります。文美国保はお得になる人とそうでない人がはっきり分かれますので、まずは自分の収入や条件で利用できるか、お得になるのか計算してみるといいですね。また収入が減少したり、結婚・出産などで家族構成が変わった場合は、保険料が割高になることもあるので、その都度見直すようにしましょう。