医療費控除で税金対策

確定申告するときに1年間でかかった医療費を申告することで医療費が控除され、一部の税金が還付される制度があります。これが「医療費控除」です。利用している人も多いですが、どこまでを含めていいのか分からず、病院で支払った医療費しか申告していないという人も多いです。今回は医療費控除の基本を解説します。

医療費控除の仕組み

医療費控除とは病気・ケガなどで病院に行って治療を受けた場合に、かかったお金を申告することで支払った税金の一部が返ってくる制度のことです。医療費控除の対象となるのは以下のようなものです。病院で支払った治療費以外も含まれます。

  1. 病院までの交通費
  2. 薬代
  3. 歯科での治療費
  4. 入院費用、食事代
  5. 妊娠時の定期検診、検査、出産費用

しかしこれらの医療費控除の対象だからと行って、全額控除できるわけではありません。控除できるのは「10万円を超えた部分(所得が200万円以下の人は所得×5%の金額を超えた部分)」で「200万円まで」です。また医療保険から保険金が給付された場合などは、その分を差し引いて計算しなければなりません。例えば民間の医療保険から支払われた入院給付金や手術給付金、診断一時金、出産一時金などは差し引きます。また公的医療保険で高額療養費制度を利用して払い戻しを受けた場合は、それも差し引いて計算します。計算式は以下のようになります。

医療費控除=医療費の合計ー支払われた保険金などー10万円

ここで医療費の合計とは「確定申告する前の年の1月1日〜12月31日まで」の医療費の総額です。また医療費の合計は自分のものだけでなく、生計を共にしている家族のものも含まれます。家計を共にしているのであれば、単身赴任の夫のものなども含むことができます。

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医療費控除できるもの・できないもの

医療費の出費がかさむのは、出産、入院、歯の治療です。この3つにかかる費用は原則的に医療費控除の対象となりますが、内容によっては対象とならないものもあります。医療費控除の原則は、以下の3つです。

  1. 治療のための医療費は控除できるが予防のための医療費は控除できない
  2. 病気やケガの治療に必要であると医師から指示されたものは控除の対象となる
  3. 健康・美容のための医療費は対象とならない

例えば「予防接種」は治療ではなく予防のため、控除の対象にはなりません。美容整形にかかった治療代も対象になりません。具体的なものを細かく上げるときりがありませんので、その他の判断の微妙なものをピックアップしてみましょう。

マッサージ、整体、針治療

これは多くの場合健康目的のため医療費控除の対象とはなりません。しかし医師から指示されて病気やケガの治療のために行なったものであり、それを証明できるならば控除の対象となります。

人間ドック

人間ドックは基本的に病気の予防のために受けるため、対象となりません。
しかし重大な病気が見つかった場合には、医療費控除することができます。

市販の薬、目薬、湿布など

市販の風邪薬、頭痛薬などの医薬品は控除の対象となります。しかし目薬、湿布などは対象となりません。またビタミン剤などは健康増進・病気予防が目的と判断されるため、対象にはなりません。

交通費

公共交通機関を利用して病院に行ったときの交通費は、医療費控除の対象となります。しかし自家用車で行った場合のガソリン代や駐車場代は対象とならないため、注意が必要です。

松葉杖、義足・義手、義歯など

医師の診断によってこれらが必要と指示された場合は、医療費控除の対象となります。

食事代

入院時の食事代は基本的に医療費控除の対象となります。しかし外食や出前をとったときの食事代や、見舞いや世話に来た親族の食事代は対象となりません。またおやつ代も対象となりません。あくまで治療目的の食事のみが控除の対象となります。また医師から食事療法が指示されて自宅で実践した場合の食事代は、対象となりません。

歯の矯正

美容目的として行なわれる矯正は控除の対象とはなりません。しかし子どもの健全な成長のために行なわれる矯正は、控除の対象となります。

医療費控除の注意点

実際に医療費控除を利用するにはどうしたらいいのでしょうか。重要なのは「領収書の管理」です。病院や薬局で支払った医療費の領収書はもちろんのこと、購入した市販薬のレシートも保管しておきましょう。また交通費は家計簿に記して証明できるようにしておきます。また医療費の支払いは12月31日までに済ませて1年間の分はまとめて行ない、10万円を超えるようにすることも大事です。

最後に医療費控除を利用する上で知っておくと便利なポイントを紹介しましょう。

5年前のものまでさかのぼって申告することが可能

去年の分の申告を忘れた!という場合も、5年前までさかのぼって申告すれば、控除を受けることができます。この制度をはじめて知ったという人は、5年分申告してしまいましょう。

収入の多い家族に集約する

所得税は収入の高さによって税率が異なります。195万円〜330万円は10%、330万円〜695万円は20%、695万円〜900万円は23%です。医療費控除は、控除額に所得税をかけた分が還付されますので、家族全員の分を収入の一番高い人にまとめて申告することで、より節税することができます。

家族が全員健康ならば、医療費が年間10万円を超えることは少ないかもしれません。しかし入院したり歯の治療を行なったりすると、意外とすぐに10万円を超えてしまいます。普段から領収書をまとめておいて、いつでも控除できるようにしておくといいですね。

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