経費にできるモノとできないモノ 個人事業主編

個人事業主にとってどこまで経費に計上することができるのかは、事業の財務状況すら左右する重要な問題です。どこまでが経費として認められるのか?経費に認められないものはどれか?判断する基準は?これらの疑問に答えていきましょう。

原則は「仕事に関する出費」が経費

会社員ならば確定申告の必要はありませんし、仕事に関する出費は基本的に会社が負担してくれます。しかし個人事業主となると、事業に関する出費は全て自分で出さなければならなくなります。これまで意識しなくてよかった経費のことを、よく知らなければ無駄に多く税金をとられることになってしまいます。申告額が税務署から過少申告と指摘された場合、悪質な隠蔽などがなくても、最大で約15%多く所得税を納付しなければならなくなるのです。しかし実際に個人事業主の方に税務調査が入ることは少なく、判断は申告者に任せられているのが現状です。

確定申告において経費と認められるのは、基本的に「仕事に関する出費」です。しかしどのような出費が経費として認められるかは、業種・職種や仕事内容によって異なります。また、法人の場合は、基本的に事業に関する支出は全て経費に計上することができますが、個人事業主の場合は、法人よりも経費にできる範囲は少なくなっています。

個人事業主が確定申告のときに経費にできるかどうかを判断するには、以下のポイント3つのを参考にしてください。

  1. 事業に関する出費であることが説明、証明できる
  2. 出費額が妥当な範囲である
  3. 収入を得るための出費である

しかし、必要以上に経費に計上してしまうと所得が少なくなり、銀行からお金を借りるときに不利になることもあります。例えば個人事業主で毎年の所得が一般的な会社員より少なかったり、赤字計上を続けていたりすると、住宅ローンが組みにくくなります。経費の計算は3つのポイントで判断し、さらに所得とのバランスを考えて計上するようにしましょう。それでは具体的な経費として認められる科目をご紹介します。

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経費にできるもの

確定申告において、経費とできる科目は白色申告でも青色申告も変わりありません。青色申告には以下の「勘定科目」があります。

従業員を雇った場合の経費

1. 給料賃金

従業員を対象とした給料、退職金など

2. 福利厚生費

従業員を対象とした社会保険料、労働保険料、社員旅行、忘年会費用など

原則は「社員全員が平等に享受できる」のが福利厚生費で、例えば忘年会やパーティ費用は福利厚生費ですが、特定の社員のみや取引先を交えた交流会などは、福利厚生費となりません。また原則は間接給付であり通勤手当や住宅手当など以外で、継続的に社員に直接お金を支給するケースがあれば、給料賃金に計上します。

日常の業務の経費

1. 荷造運賃

荷造に使った梱包用品の費用、宅配便配送料など

2. 消耗品費

事務用品、パソコンなどの備品、机・本棚などの家具など

3. 通信費

仕事用の携帯電話やインターネットの料金、商品発送以外の郵便料金、はがき代など

4. 地代家賃

事務所や倉庫、駐車場などの家賃、共益費など

5. 水道光熱費

事業用の電気、ガス、水道料金など

6. 損害保険料

商品、店舗、営業車などの保険料

7. 修繕費

店舗、事務所、設備などの修繕費用

8. 減価償却費

店舗、設備などの資産の減価償却費

9. 租税公課

事業税、不動産取得税、固定資産税、自動車税などの事業に関わる税金

10. 雑費

その他の項目に当てはまらない経費。例えば事務所の引っ越し費用、クリーニング代、粗大ゴミの処理費用、登記の手数料など、少額でかつ不定期な出費。

雑費は例外的な項目であり、あまり多くなると税務署から目をつけられやすくなります。なるべく他の項目に入れて、どうしても入らないもののみを入れるようにしましょう。

事業の中心となる経費

1. 外注工賃

商品の生産など外部に発注して支払った費用

2. 貸倒金

回収できなくなった売掛金など

3. 利子割引料

借入金の利子・割引手数料

・営業活動などの経費

1. 旅費交通費

通勤費用や出張時の交通費、高速道路料金、駐車料金など

2. 広告宣伝費

広告料金、名刺作成費、求人広告費用など

3. 接待交際費

取引先との飲食費、パーティー費用、歳暮費用など。個人事業ならば接待交際費の上限はありませんが、いくらでも認められるわけではありません。原則的には事業に関連する接待、贈与などですが、詳しくは別の記事で解説します。

経費にならないもの

冒頭で説明したように経費に計上できるのは、「事業に関わる費用」です。そのため以下のような出費に関しては計上することができません。

1. 家庭用の費用

家庭用の税金、電気・ガス・水道料金、電話料金、インターネット料金など、個人事業主自身の生活費。事務所と住宅を兼用している場合は家事按分して事業用の費用は計上することができます。

2. 事業と無関係の出費

事業に関連のない交通費、旅費、飲食費など

3. 事業に関連しない保険料

事業主の保険料のうち事業と関連しない部分

4. 事業主の給料、福利厚生費

事業主自身の給料、医療費、公的年金の保険料、国民健康保険の保険料。また事業主および青色専従者のみの旅費。届出をしていない青色専従者の給与。

5. 借入金の元本

借入金の利息を除いた元本部分など

6. 回収可能な売掛金

回収不能であると判断されない売掛金など

7. 使われていない設備の減価償却費

現在実質使用されていない設備の減価償却費

個人事業主の場合どこまでが事業と関連するものでどこまでが関連しないか、線引きすることは難しいです。そのため実際には、多少関係ない飲食費や交通費などを経費に計上したり、家庭で使うパソコンなどを備品として購入するケースも多いです。実際のところ数千円や数万円程度経費におかしいところがあっても、税務調査に来ることはほとんどありません。悪質なものでなければ事業とどこまで関係があるのか、神経質になりすぎる必要はないでしょう。

白色申告と青色申告での経費のちがい

青色申告は自分で帳簿をつける義務があるかわりに、さまざまな税制上のメリットを受けることができます。白色申告と青色申告とでは、経費に計上する科目は同じです。しかし手続きや得られるメリットにちがいがあります。青色申告では損益計算書を決算書として作成するにに対して、白色申告では収支内訳書を決算書として作成し、提出します。

事業用の出費とそれ以外の出費とをどう分けるか、というのは個人事業主として働いている人にとって難しい問題です。例えば、自宅の一部を事務所として使用している場合は、事務所として使っている面積を「事業用」と判断します。その面積が自宅の面積のどのくらいを占めるかという割合によって、家賃を分割し、その分を経費として計上することができます。これを家事按分と言います。詳しくは別の記事でご紹介します。

今回は確定申告における経費にできるもの・できないものについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。個人事業主にとって確定申告は非常に重要なものですが、周りに詳しい人がいなければ自分で調べて作成しなければなりません。普段からよく調べて知っておくようにしましょう。

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