会社設立後、社会保険はどうすればいいの?

最近起業した、これから起業するという人にとって、一つの大きな悩みとなるのが「社会保険」です。社会保険は会社にとって大きな負担になりますが、法律上加入が義務づけられています。たとえ自分しか社員がいなかったとしても必ず加入が必要です。今回は、社会保険の基本について解説します。

そもそも社会保険とは?

社会保険は「広義」の社会保険と「狭義」の社会保険の2つに分けられ、さらにそれぞれがまた2つに分けられます。広義の社会保険には「健康保険」「厚生年金」「雇用保険」「労災保険」の4つがありますが、このうち最初の2つが狭義の社会保険です。

健康保険

会社に勤めている従業員に適用される公的医療保険

厚生年金

会社員が加入する年金で公的年金制度の二階部分

この2つの社会保険は、法人ならば必ず加入しなければなりません。また個人事業主でも5人以上の従業員がいる場合は、加入する義務があります。この従業員には社員はもちろんですが、常時雇用している契約社員、パート、アルバイトでも労働時間や労働日数によっては加入義務が発生することがありますので気をつけましょう。

雇用保険

失業したときに失業給付や雇用促進事業を受けることができる

労災保険

勤務中などの事故に対して医療費が給付される

雇用保険と労災保険の2つは、まとめて労働保険と言われます。雇用保険は法人の代表者、つまり社長は加入することができません。そのため起業したが社員は社長の自分だけ、という場合は加入できません。また労災保険も従業員を雇った時点で加入するものです。

労災保険はパート、アルバイトも含めた全従業員が加入します。雇用保険もパート、アルバイトであっても、週の労働時間が20時間以上で31日以上雇用される場合は、加入する必要があります。

つまり、健康保険と厚生年金は起業した時点で強制加入であり、雇用保険と労災保険は従業員を雇ったときに加入義務が発生するということです。ちなみに健康保険、厚生年金については、個人事業主以外でも、以下の業種は加入適用外になっています。

  • 一次産業(農家、水産業、林業など)
  • サービス業(美容室、飲食店など)
  • 法務関係サービス業(行政書士、司法書士、弁護士事務所など)
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社会保険の負担は?

社会保険料は社員が約14%、会社が約15%負担することになっています。具体的にどのくらいの負担になるのかシュミレーションしてみましょう。

  • 従業員数:1人
  • 従業員:正社員30歳男性
  • 給与:20万円(1ヶ月)

このケースでは、社員が健康保険と厚生年金、雇用保険を約半分ずつ負担することになり、毎月2万8090円がかかります。会社側は健康保険、厚生年金、雇用保険の半分の負担と労災保険の負担がありますので、合計で2万9390円の負担になります。月収20万の社員一人の社会保険だけで、毎月約3万の負担になるのです。年間換算で約35万円です。

社員の給与が30万ならば、一ヶ月の会社負担は4万4085円となり、年間換算すると約52万円です。同じ給与の社員が5人いれば、社会保険だけで年間250万円以上も負担しなければならなくなるのです。法人税などの税金は、儲けがなければ納付が免除されるものもありますが、社会保険料はそうもいかないのです。起業するときには、これだけの社会保険料を負担することまで資金計画に入れておかなければなりません。

社員側としては、社会保険がついていることには大きなメリットがあります。例えば社会保険の1つである厚生年金は、公的年金制度の二階部分にあたるものです。厚生年金に加入していれば、老後は国民年金+厚生年金を受け取ることができるため、老後の生活設計にゆとりができます。従業員は雇っているものの、個人事業主だから加入していない、という人もいるかもしれませんが、社会保険が充実しているかどうかは採用時に大きな差となります。少しでも優秀な従業員を雇うためにも、社会保険の充実は最低条件になります。

社会保険の手続き

加入時の手続き

社会保険の加入手続きは、起業して登記するときの初回のみになります。手続きは加入義務が発生した時点から「5日以内」ということになっているため、法人設立手続きをしたらすぐに行なうようにしましょう。手続きを行なう場所は「年金事務所」です。提出は窓口で行なうこともできますが、郵送や電子申請で手続きすることもできます。郵送、電子申請については以下のリンクから行なうことができます。
日本年金機構:新規適用の手続き

算定基礎届

加入後は毎年4月〜6月に「標準報酬月額」を計算して、年金事務所に届出を行ないます。これを「算定基礎届」と言います。標準報酬月額は、実際に支払った給与から計算します。

変更手続き

従業員が新しく入社したり、または退職した場合等は、社会保険の対象者が変更となるため年金事務所で変更手続きを行なう必要があります。また社会保険対象者の住所が変更になった場合などの情報変更も、届出を行なう必要があります。

労働保険の手続き

労災保険については、労働基準監督署で書類をもらいそれを提出することで手続きを完了することができます。雇用保険はまずは労働基準監督署で「保険関係成立届」を提出し、ハローワークにいって雇用保険加入のための書類を提出します。雇用保険の場合はこの他にも多くの書類を提出しなければなりませんので、詳しくは以下の厚生労働省の雇用保険制度についてのページを確認しましょう。

厚生労働省:雇用保険制度

雇用保険は従業員が新たに入社した場合や退職した場合にも、ハローワークで様々な手続きを行なう必要があります。面倒ですが、これを怠ると従業員にとっても会社にとっても大きな問題となりますので、必ず行なうようにしましょう。

起業時は社会保険の負担に注意

今回シミュレーションしたように、社会保険の負担はとても大きいものです。起業時は事業が成功するかどうかに集中しがちですが、社会保険料の負担を甘く見たために会社のキャッシュフローが圧迫され、本業にも影響してしまうケースがあります。社会保険加入は義務であり、避けることはできません。最初から会社の資金計画に組み込んで、しっかり備えるようにしましょう。

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