作成したデザインやサービス名が使えない?クリエイターが知っておくべき商標権とは

クリエイターは著作権のことを意識して仕事をすることが多いと思いますが、「商標権」も無縁ではありません。
作成したデザインやサービス名がすでに商標登録されていた場合、作成したものが使えなくなるケースがあるからです。
今回はクリエイターが知っておくべき商標権の基本について、解説します。

商標権とは

「商標権」とは、商標法に基づいて「商標を使用する人の信用を維持し利益を保護する知的財産権のひとつである権利」のことです。
商標は登録料を支払って特許庁に商標登録することで保護されます。
商標の登録から10年間維持され、その後も無制限に更新することができます。
商標登録には、会社名やサービス名の「文字商標」、イラストやロゴなどの「図形商標」、マークなどの「記号商標」、立体的な造形物である「立体商標」、およびそれらの組み合わせの商標があります。

商標登録すると、登録者は商標を自由に使うことができ、権利を占有できます。

例えばテレビのCMで見た有名企業のコーヒーを買おうとコンビニに行った際、無名な会社がデザインを真似して売っていたら、間違えて購入する人が増えるでしょう。
そのようなケースが発生すると消費者は間違って購入してしまいますし、オリジナルの会社は不利益を被ります。
それを防ぐために商標が保護されるのです。
このようなトラブルはウェブ上ではさらに多く発生します。
ウェブ上では消費者がサービスを利用する上で、多くの情報をデザインに依存しているからです。
また、SNSやブログ、ウェブメディア、ウェブサービスなどが多様化し膨大なデザインが増え続けていることで、ウェブ上での知的財産権の問題は、特にクリエイターにとって敏感にならなければならないものとなっています。
例えば作成したロゴがすでに誰かが商標登録されていたものに似ていた場合、これを使うと自分やクライアントに差止請求や損害賠償請求が行なわれる可能性があります。
使用する前に商標登録されていることが判明しても、すでに作成していればその作業は水の泡になってしまいます。

商標権の侵害

それではどのような場合に、商標権が侵害されたと判断されるのでしょうか。
商標の機能とはその商標によって、他のサービス・商品と差別化されていることです。
そのため例えば似たようなデザインを使用していても、対象となるものが明らかに別の商品・サービスであったりするならば、商標権侵害にはなりません。
例えば極端な例ですが「欠けたりんご」のデザインをスマホやパソコン関連商品に利用すれば、Apple社製品を連想させるため商標権の侵害になります。
しかし、野菜・果物販売サービスのサイトで利用しているならば、侵害とは認められないでしょう。
使い方が意図的であるかそうでないかに関係なく、商標の使用によって消費者が勘違いしないかどうかが商標権の侵害の目安となります。
整理すると以下の両方の条件に当てはまると商標権の侵害になるということです。

  • 1. デザインやネーミングが似ている
  • 2. その対象の商品やサービスが似ている

商標権を侵害しないためには

ロゴの作成、会社名の決定、サービス名のネーミング、サイトのデザイン作成などクリエイターの仕事の多くは、商標と関わる仕事です。
それでは実際の仕事の中で、どのような点に気をつければいいのでしょうか?

1. 一般的なものは登録できない

商標登録するとその商標の利用を占有できるという強い権利を得ることができます。
そのため、どのような商標でも登録できるわけではありません。
たとえば一般的に使われる用語、ありふれたネーミング、簡単すぎる図形(★や●、ひらがなやアルファベット1文字など)は商標登録できません。
また、産地名や材料名、用途、価格、形状、使用方法などの組み合わせによる商標登録はできません。
産地名などは特定の会社や個人が独占するべきではないからです。
そのため一般的なネーミング・デザインなどに関しては、使用は問題ありません。

2. 商標調査

1. に該当しないネーミングやデザインを使用したいときには、作成する前の段階で商標登録されていないか商標調査する必要があります。
クリエイターは仕事を依頼された時点で、それが商標調査の必要がある案件であるかどうか判断し、クライアントに調査を依頼するか、必要であれば自分で調査しなければなりません。
商標調査は「特許庁プラットフォーム」で自分で行なうことができます。

特許庁プラットフォーム:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage

しかし、調査にはある程度の手間と知識が必要ですので、クライアントに相談し、調査のプロに依頼することも検討するべきです。
商標や著作権、肖像権など知的財産権の分野は、曖昧なことが多く、悩みやトラブルの原因となっているクリエイターの方も多いかもしれません。
しかし、まずは基本的な知識を知っておいて、仕事をする中でさらに実務的な知識を身に付けていきましょう。

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