平成28年度の税制改正で何が変わる?

平成28年度の税制改正大綱が発表されました。法人税率が引き下げられ、かわりに外形標準課税が引き上げられるなどの改正が行われ、企業にとってはメリットが大きいものであると言われています。しかし、中身を見ると、少し違う姿が見えてきました。今回の税制改正のポイントと経営者・事業主への影響について解説しましょう。

法人税・法人実効税率の引き下げは中小企業や個人事業主には関係ない

税制改正は毎年行われていますが、今回の平成28年度の税制改正大綱は企業の税負担を減らすかわりに、そのお金をその他のこと(投資など)に使わせるようなものになっています。企業は基本的に税負担が少なくなり、本業にお金を使いやすくなるというわけです。その今回の税制改正の中でも、もっとも話題になったのが、法人税・法人実効税率の引き下げです。

法人税は現行の23.9%から、平成28年度は23.4%へと引き下げられ、法人実効税率は32.11%から、29.97%へと引き下げられます。法人税が少なくなることで、黒字企業の税負担は小さくなります。新聞などメディアではかなり報道されましたが、実はこれは「中小法人以外」、つまり大企業の法人税率の引き下げであり、中小企業には関係ないものです。

さらに、法人実効税率の引き下げによる税収減を補うために、「外形標準課税」の引き上げが行われることになりました。外形標準課税とは事業所の面積や資本金額、従業員数などの事業そのものにかかる税金のことであり、法人税とは違って赤字企業でも支払う必要があります。しかし、これも大企業向けの税制であり中小法人は、外形標準課税の拡大の影響は今のところ受けないことになっています。つまり、よくメディアで報道されている法人税引き下げと外形標準課税の拡大ですが、中小企業や個人事業主などの小規模事業者には関係ないのです。

設備投資の固定資産税軽減

それでは、税制改革で小規模事業者に影響のあるものはあるのでしょうか。実は小規模事業者向けの税制改正も、いくつか行われることになっています。そのひとつが「新たな機械装置の投資に係る固定資産税の特例」です。これは、今後平成28年度から平成30年度までの3年間は、中小企業が新たに取得する機械装置の固定資産税を2分の1にできる、というものです。黒字企業でも赤字企業でも適用されます。適用できる機械装置は、160万円以上のもので生産性が1%以上向上するもの、という条件がついていますので、小規模の製造業や加工業の工場などが対象の大部分になることが考えられます。これも大規模な生産設備を恒常的に使用することがないようなウェブサービス系の企業などでは、あまり利用するメリットはなさそうです。

少額減価償却資産の損金算入の延長

それでは、今回の税制改正では中小企業が享受できるメリットはないのでしょうか?そんなことはありません。あまり話題にはなりませんが、いくつか利用できる制度が存在します。

「少額減価償却資産の損金算入」の制度は、平成28年度までという制限つきで運用されてきました。この制度は、中小企業は取得価額が30万円未満の減価償却資産については、年間300万円まで全額が損金算入できるというものです。消費税率が複雑になり、マイナンバーの導入で企業の事務負担は増加します。そこで中小企業を支援するために、少額減価償却資産の損金算入の特例が延長されることになりました。平成29年度末までの2年間、引き続きこの制度が利用できます。

通常、企業が事業用に取得した減価償却資産は、固定資産として計上され、定められた使用可能期間から分割して減価償却します。そのため、たとえば10月に購入した資産は、その年は2ヶ月分しか損金算入することができません。しかしこの制度を利用すれば、取得した額の分だけ一括で損金算入することができるのです。利益が大きくなったときは、この制度を利用して利益を圧縮し、節税に利用することができます。

この制度では年間合計300万円が上限になっているため、たとえば20万円のパソコンを15台購入した、という場合、そのすべてを一括でその年に損金算入できます。この制度が適用されるのは、中小企業と青色申告をしている個人事業主です。実際、これまでこの制度は従業員5人以下の小規模企業を中心に、全国で46万社が利用しています。利用できる条件にある方は、ぜひ利用することをおすすめします。

交際費の損金算入の延長

大企業の交際費は原則的に、損金算入することはできません。しかし、中小企業は特例的に、800万円までが損金算入することができます。交際費は事業活動にとって非常に重要な出費になりますが、この制度がさらに平成29年度末までの2年間適用されることになりました。交際費がないという企業は存在しないと思われますので、今後もこの制度をフル活用して節税することをおすすめします。

企業版ふるさと納税の設立

近年話題になっているふるさと納税ですが、その企業版が平成28年度〜平成31年度限定で実施されることになりました。これまでのふるさと納税の制度では、企業は納税方法が法人税から寄付金になるだけで、ほとんどメリットはありませんでした。しかし、これからは寄付額のさらに30%が法人税から控除されるため、実質60%の税金が軽減されることになります。法人税の実際の負担分が30%としても、残りの30%分は節税効果があるということです。企業にとっては節税対策として利用する上で魅力的な制度となりましたので、これも利用を検討する必要がありそうです。

平成28年度の税制改正では、大企業が大きな恩恵を受けるものになっています。しかし、中小企業も節税対策に使える制度が多くあるため、適用できる条件などをよく調べたうえで最大限利用していくといいですね。

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