ウェブデザインの権利をどうやって守るのか

デザインの模倣を防ぐ権利に「意匠権」があります。
著作権や商標権、特許などと共によくビジネスで利用される権利ですが、実は意匠権ではウェブデザインを保護することはできません。
今回は意匠権とはどのような権利なのか、また、ウェブデザインの権利をどうやって守るのか、簡単に解説していきます。

意匠権とは

売れる製品の基準はどのようなものでしょうか?
機能性や値段も重要な要因ですが、デザイン性も非常に重要です。
どんなに便利でもデザインの悪い製品はなかなか売れないでしょう。
そのデザインを守る権利が「意匠権」です。意匠権は主に工業デザインを保護する権利で、特許庁に出願して登録されることで、登録から20年間デザインの占有権を得ることができます。
例えばスマホや車のデザイン、ペットボトルやメガネの形状などを登録することができます。
出願・登録にもお金がかかるため、企業がそのデザインによって製品の利益が得られると考えた場合に、利用するのが一般的です。
意匠登録されれば、類似したデザインを意匠権の侵害として排除することができます。

意匠権保護の目的は、模倣からデザインを守ることです。
売れる製品のデザインがマネされてしまうと、そのデザインをつくり出したデザイナーや企業の利益が損なわれてしまうからです。
意匠権が認められるデザインは「大量生産できるデザイン」であり「新規性」があり、簡単には考えだせない「創作性」がある、などの条件を満たす必要があります。
意匠権の対象となるのは、例えば「食品」「衣服」「日用品」「電子機器」「一般・産業機械」「その他基礎製品」など多岐にわたります。

ウェブデザインは対象とならない?

意匠権はもともと「工業デザイン」を対象として保護されるようになった権利です。
そのため以前はウェブデザインには関係のないものでした。
しかし欧米ではすでに意匠権の保護はウェブ上のデザインまで拡張されており、日本もようやくウェブデザインの分野でも保護されるようになってきています。

2007年からは「画面デザイン」の保護が意匠法に追加されました。
これでスマホの操作画面やゲームの操作画面など、そのデザインが製品の機能に直接関係する場合に限って、意匠権の保護が認められるようになりました。
こうしてウェブデザインも意匠権の対象となる道が拓けました。

しかし現在の日本で保護されるのは、その製品の機能と直接関連しているデザインに限られています。
たとえば、iPhoneのロックを解除する画面などです。
そのため製品から独立して製作されるアプリやウェブサービスなどは意匠権保護の対象とはなりません。
意匠権を「デザインを保護する権利」とだけ覚えていると、自分の創作したウェブデザインがすべて保護されるように勘違いしてしまいがちですが、現状では意匠権では多くのウェブデザインを保護することができないのです。
近い将来にはウェブデザインの保護にまで意匠法が拡張される可能性は高いですが、今のところウェブデザインを守るには別の手段を使うしかありません。

ウェブデザインはいかにして守るか?

クリエイターにとって自分の創作したデザインをいかにして守るのか、という問題は非常に重要です。
現状でのデザインを守る方法には、以下の方法があります。

1. 著作権で保護

もっとも一般的なのは、著作権での保護でしょう。
著作権は登録する必要はなく、創作から50年間は著作物を自由に利用・処理することができる権利を占有できます。
実際の仕事の中でも、著作権を取引するケースは多いでしょう。
著作権の取引について、詳しくは以下の記事を参照してみてください。
制作会社は勝手にHPに実績を掲載してよいのか

2. 商標登録で保護

デザインを確実に保護するためには、商標登録するという選択肢がもっとも有効かもしれません。
これまでに登録されているデザインと類似しないもので独創性のあるものならば、登録料を支払って商標登録することが可能です。
作成したデザインやサービスが使えない?クリエイターが知っておくべき商標権とは

3. 不正競争防止法で保護

著作権や意匠権が認められず、商標登録もしていない、という製品やサービスでも、他者に明らかに模倣されている場合「不正競争防止法」によって、損害賠償を請求することができます。
たとえば自社で制作したアプリやウェブサイトにそっくりなものが作られて利益が損なわれている場合、販売から3年以内ならばその相手に使用停止を求め、損害賠償請求することができます。
ウェブのデザインだけでなく、類似のドメインを利用した場合なども違反と認められます。
つまり、利用者が間違うようなケースで認められるということです。

ウェブデザインの分野は、知的財産権保護の法律の制定が追いついていません。
そのためあいまいな点や、複雑な点も多くあります。
しかし、かといってまったく保護されないわけでもなく、侵害されたならばまずは調べてみる必要があります。
どのような手段で自分の創作したデザインを守ることができるのか、まずは知識として知っておくことが重要ですね。

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