フリーランスのクリエイターの確定申告は青色申告にする方が良い

確定申告の時期に、毎年のように話題になるのが「白色申告」と「青色申告」のどちらがいいのか、ということです。メリットが大きいが手間も大きいと考えられている「青色」は、本当にお得なのでしょうか?今回は青色申告の手間とメリットについて、詳しく解説します。

確定申告とは自分で納税額を確定させる作業

いよいよ今年も、2015年度の確定申告が2月16日からはじまります。フリーランス(個人事業主)の方は、かならず確定申告を行う必要がありますが、今回がはじめての確定申告であるという人は、確定申告がどのようなものなのか、どのような手続きを行う必要があるのか、よく理解していないかもしれません。

会社員であっても、フリーランス(個人事業主)であっても、所得に応じて税金を支払う必要があります。しかし、会社員の場合は、会社が所得に応じて税額を計算し、納付してくれます。これが源泉徴収です。会社員は会社からの給与以外の所得がない限り、自分で税額を計算する機会は少ないです。そのため、今回が独立してはじめての確定申告だという方は、とまどうことが多いと思います。

フリーランス(個人事業主)は、1年間(2015年1月1日〜2015年12月31日まで)にどれだけの収入があり、どれだけ経費がかかり、どれだけ利益が出て、どれだけの税金を支払う必要があるのか、明らかにして納税額を決定しなければなりません。この作業が確定申告です。個人事業主の場合は「収入—経費=利益、利益—各種控除=所得」となり、この所得額に所得税率をかけたものが、所得税の納付額になります。個人事業主は、どんなに小さな利益しか出していなくても1つの事業を行っているため、正確に収支と税額を計算することが義務づけられているのです。

フリーランスの方ならば、確定申告のやり方について一度は「青色申告」「白色申告」のワードを聞いたことがあると思います。そして、青色申告の方がお得であるということも聞いたことがあるでしょう。しかし、青色申告は手続きが複雑だ、手間と時間がかかる、とも言われることが多いです。気になるのは「青色申告にするメリットと、申告にかかる手間と手続きを比べると、結局のところどっちがいいのか?」ということだと思います。

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白色と青色の違いは大きい

結論から言うと基本的に「仕入れ」のないクリエイター系の仕事(ライター、プログラマー、デザイナー、カメラマンなど)をしている人には、やはり青色申告の方がお得であると言えます。詳しく説明しましょう。

青色申告のメリットを整理すると、以下のようになります。

青色申告特別控除が使える

青色申告は選択しただけで、10万円が控除されます。利益が100万円出たらそこから10万円を差し引いて利益を90万円に圧縮することができるということです。さらに「貸借対照表」を作成すれば、65万円も利益から控除することができます。100万円の利益を35万円まで圧縮することができるということです。

赤字の繰り越し

青色申告を選択すれば、今年出た赤字を来年以降、3年までに繰り越すことができます。事業を開始した1年目は出費が多く、赤字が出ることが珍しくありません。赤字になれば所得税を支払う必要はありません。ただし、赤字は1万円でも100万円でも、所得税はゼロです。白色申告ならば1年目の赤字がどれだけ大きくても、次の年に繰り越すことはできませんが、青色ならば1年目に大きな赤字が出てしまっても、それを3年間まで繰り越しが可能なのです。1年目の100万円赤字が出たならば、その100万円を2年目に繰り越して2年目の利益を圧縮し、納税額を小さくすることが可能なのです。

配偶者特別控除

個人事業主の場合、生計を一にする家族に支払うお金は、生活費なのか給与なのか区別することが難しいため、生活費として支払うことができません。しかし青色申告ならば家族に給与を支払ったときに、その給与額を経費にすることができます。(ただし、これは申告する年の3月15日までに「青色専従者給与に関する届出書」を提出することが前提になっています。)

上記のようなメリットがあるのに対して、フリーランスの方が青色申告に躊躇するのは、以下のような「デメリットと思われていること」があるからです。

個人事業主は一人もしくは家族や、少ない従業員と事業を行う形態です。そのため白色申告のように簡単な手続きで、ざっくりと申告することが認められているわけです。しかし青色申告をするためには、白色のような「ざっくり」ではなく、きちんと領収証を保管し、複式簿記で記帳し、損益計算書・貸借対照表を作成する必要があります。

青色申告とは、しっかりとお金の出入りを記録することで税務署の負担を軽くする代わりに、いろいろなメリットがありますよ、という制度です。白色よりも手間がかかってしまうことから、青色申告に躊躇する方も多いのです。

しかし、実はクリエイターの場合は、このデメリットは大きな負担にはならないのです。

「白色は手続きが簡単」は間違い

2014年度から、白色申告でも記帳義務が発生するようになりました。記帳は「簡易簿記」でいいのですが、青色申告も複式簿記ではなく簡易簿記でも10万円の特別控除と、赤字繰り越しなどのメリットがあります。つまり簡易簿記での青色と、白色申告とには、手間の差はほとんどないのに、青色は多くのメリットを享受できるというわけです。簡易簿記での記帳は簡単で、家計簿をつける感覚でつけることができます。青色申告では損益計算書の記入も必要になりますが、白色の収支計算書を記入する手間とほぼかわりません。白色との比較においては、簡易記帳の青色申告の方が、大幅に魅力的なのです。

さらに、クリエイターの場合は複式簿記での記帳が、その他の仕事の方に比べて簡単です。なぜならば、クリエイターは「仕入れ」にかかるお金がほとんどないからです。製品を作ったり、商品を販売したりする業務の場合は、製品や材料の仕入れを記帳しなければなりません。仕入れは経費ではなく費用になるため、また記帳が複雑になります。しかしクリエイターの仕事は、商品を仕入れることは基本的にありませんし、何かを作るのに必要になるのはパソコンや知識、ソフトなどだけでしょう。販売されている青色申告のソフトを使えば、簡単に記帳をすませることができます。

法人化を考えているフリーランサーは、青色申告にするべき

青色申告は、ここまで紹介したようにわずかな手間はかかるようになるものの、多くのメリットを享受できるフリーランス(個人事業主)の味方の制度なのです。さらに、これ以外にも青色申告をするメリットは存在します。それは自分でお金の流れをしっかり管理できるようになるということです。

将来的に法人化を考えている方は特に、個人事業主のうちから自分で損益計算書・貸借対照表などを作成して、お金の流れを把握し、決算書はどのように作成するものなのか理解しておくことを強くおすすめします。法人化すれば、税金の計算・納付や収支の管理は、個人事業主よりもずっと厳格になります。法人化するときのことを考えて、今のうちから練習しておくという意味でも、青色申告での確定申告をはじめてみてはいかがでしょうか。

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