フリーランスが知っておくべき業務委託契約の注意点

フリーランスになると業務委託契約を結ぶことがあります。
業務委託契約にはいくつか注意点があり、不利な契約を結ばないためには知識が必要です。
今回はフリーランスが業務委託契約を結ぶうえで注意するべき点について解説します。

会社員と業務委託の違い

会社員から独立してフリーランスになったという方は、
会社員と業務委託の違いを、まずはしっかりと理解しておく必要があります。

会社員とは、言うまでもなく会社と雇用契約を締結している人のことです。
これに対して業務委託とは、特定の業務を直接会社から委託される契約を結ぶことです。

フリーランスになると、取引先の企業と業務委託契約を結んで業務を行うことが多くなりますので、
業務委託契約の仕組みと結び方について、よく理解しておく必要があります。

もう少し詳しく解説しましょう。
業務委託契約では、契約した納品物もしくは業務の時間・期間に対して報酬が決まります。

納品物で報酬が決まる契約を
「請負契約」

時間・期間によって報酬が決まる契約を
「委任契約」

と言います。

また、特定の商品を販売する「販売契約」もあります。
どれも、特定の業務に関して企業と対等な立場で契約を締結して業務を遂行するという契約です。

フリーランス(個人事業主)での業務委託契約は、会社員の雇用契約とは異なるため、以下のような違いがあるのです。

1. 経費、社会保険料は自分で負担
2. 定額の給与の支払いはなく、契約した業務の時間や納品物によって報酬が変わる
3. 契約内容は自己責任

会社員ならば、会社と雇用関係を結んでいるため、決められた時間に会社に行って働き、
契約に基づいて毎月一定額の給与を得る形になります。

業務委託の場合は、請け負っている成果物を納品した場合に、その納品物1つあたりいくらという形で報酬が決まり、
時間・期間で委任契約されている場合は、どれだけの時間・期間をその業務に費やしたかによって、報酬が決まります。

当然、業務委託は特定の業務のみを企業から委託される形になりますので、企業からは報酬が支払われるのみで、
社会保険などは自分で加入して保険料を支払わなければなりません。

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業務委託契約を結ぶうえでの注意点

注意点1. 偽装請負

しかし、特定の業務に関する業務委託契約を結んでいても、
実際には会社員としての雇用関係に限りなく近い状態になってしまい、トラブルになるケースもあります。

それが「偽装請負」です。

企業は雇用関係にある従業員に対しては、社会保険料を負担することが義務づけられています。
この社会保険料は企業の人件費としてかなり大きな負担になるため、企業側としてはなるべく抑えたいと考えます。

また、従業員に対しては労働基準法が適用されるため、一定時間を越えた残業をさせることもできません。
そのため、企業はなるべく従業員を雇わずに、業務を外注するインセンティブを持っています。
そこで業務委託を利用することがあるわけです。

たとえば、フリーランス(個人事業主)であるAさんは、B社と委任契約を締結したとします。
B社は会社にAさんの机を準備し、Aさんに一定時間会社で業務を行うように言いました。
Aさんはその後B社にほぼ毎日出勤して、契約した業務を行い、業務に対して報酬を得るようになりました。

このようなケースでは、Aさんの業務は限りなく雇用形態に近いものです。
しかし、B社は委任契約を締結しているだけですので、Aさんの社会保険料などを負担していません。

もしも、Aさんに、個人事業主として業務を行っているという自覚がなかったり、
雇用契約と業務委託の違いをよく理解しないまま契約していたのだとすれば、
これは「偽装請負」と見なされて、B社側は法的に罰則を受けることになります。
Aさんは気付かないままならば、不利な条件で働き続けることになります。

フリーランス(個人事業主)は、不利な条件で働かせられることのないように、
この違いをよく理解しておかなければならないのです。

注意点2. どのような条件で報酬が決まるのか

フリーランスとして働いていると、日常の業務に追われて契約関係をあいまいなままにしてしまうケースがよくあります。
しかし、契約をあいまいにしたまま業務を遂行すると、あとからトラブルになることがあります。

また、繰り返し取引をしている相手とは、これまで通りの取引だからと、いちいち契約せずに口約束で仕事をはじめることも、
フリーの方ならば経験ある方も多いと思います。

しかし、これもあとからトラブルの元になります。
特に気をつけなければならないのが、「どのような条件で報酬が支払われるのか」です。

業務委託には大きく委任契約と請負契約があるということでしたが、
まずは業務委託の形態がどちらなのか、チェックしましょう。

納品物に対して報酬が支払われる請負契約ならば、報酬の支払い条件は分かりやすいです。
しかし、業務を行う時間・期間に対して報酬が支払われる委任契約は、注意が必要です。

委任契約の場合、特定の業務を定められた期間遂行し、その業務に対して報酬が支払われるのですが、
請負契約が納品物という成果に対して報酬が支払われるのに対して、
委任契約は業務のプロセスに対して報酬が支払われます。

そのため、業務の時間・期間はどこまでが範囲となるのか、契約書でしっかりチェックしておく必要があります。

注意点3. 契約条件を満たせなかった場合のこと

委任契約は成果を単純に問うことができない、事務などの業務が対象となるものなので、
クリエイター系の職であるフリーランスの方は、多くが請負契約で契約すると思います。

請負契約で注意すべきなのは、契約条件を満たせなかった場合のことです。
たとえば、ウェブデザインやプログラムなどでは、
一部のクオリティが満たないために報酬もゼロにされたのでは、委託された側としては納得できません。

そこで、契約時に一部のみ条件を満たせなかった場合に、報酬はどの程度支払ってもらうことができるか、
相手と交渉して契約書に明示するようにすることをおすすめします。

秘密保持契約(NDA)とは?

業務委託契約において、業務によっては「秘密保持契約(NDA)」を結ぶことを要求されることがあります。
NDAとは業務において特定の秘密情報を秘密にすることを約束する契約です。

デザインやソフトウェアのプログラム、新しいサービスなど第三者に知られたくない情報を扱うことがある場合に契約されます。
締結される内容は、一般的には大きく以下の3つが契約されます。

1. 秘密情報の範囲
2. 情報の取扱いについて
3. 秘密情報の破棄

そもそも秘密にしなければならない情報はどこからどこまでの範囲なのか、
またNDAの契約過程すら秘密にするべきなのかが1点目。

2点目は、情報はどのように取り扱わなければならないのか、
第三者への漏洩を禁止するのか、業務に関連する目的以外で使用することが禁止されているのか。

3点目は、契約終了時には情報を破棄するのかどうか、というものです。
フリーランスで働いているクリエイター系の職業の方は、NDAの契約を依頼されることの方が多いかもしれませんが、
契約時によく確認せずにサインしてしまうと、あとから情報の扱い方でトラブルになってしまうかもしれません。

契約時によく確認し、あいまいな点は先に確認しておくようにしましょう。

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