東京と沖縄でのリモートワーク

今回は、Railsの教育/教材制作・アジャイル開発・翻訳技術研究の事業を展開しており、東京と沖縄でリモートで開発をおこなってるYassLab代表の安川さんに、リモートワークについてインタビューさせて頂きました。

Q. 開発事業の他に教育事業を行っているようですが、どのようなことを行っているのですか?

A. そもそも教育事業は、沖縄県と株式会社レキサスが「優秀な人材をより優秀にする」という目的で開始したのが始まりで、そこの指導者として抜擢されたのが僕です(当時はまだYassLabではありませんでした)。未来の沖縄を支える高度IT人材の育成が主眼となっており、そのためには「人材の底上げだけではなく優秀な人材をさらに伸ばすことも大事」という考えに共感し、3年間そこの常任講師を務めました。そこでの経験から「今足りないのは圧倒的な教材コンテンツである」と考えに辿り着き、現在のRailsチュートリアル(http://railstutorial.jp/)やRailsガイド(http://railsguides.jp/)といったプロジェクトに繋がっています。実際、これらのプロジェクトの成果物はRuby on Railsを勉強する多くの人々に影響を与えていて、スタートアップや中〜大企業、公共機関、資格認定機関、大学/大学院に至るまで、様々な場所で全国的に教材として使われています。

Q. リモートワークのメリットとはどんなところですか?

A. 僕はリモートワークを単なる福利厚生という面だけでなく、ビジネスという面でもメリットがあると考えています。地方は東京などの都心部と比べると固定費が安いという特徴があり、例えば沖縄の場合、5LDKの一軒家を月々10万円ほどで借りることができます。一方で、地方には技術的に簡単な開発案件が多く、その単価も東京に比べて安いという現状もあります。そこで僕たちは、東京にある技術的に難しい課題を解決する仕事を、地方在住の優秀な社員と一緒に開発するといった体制を採っています。また、東京水準の仕事をこなしているので、当然、同程度の賃金を社員に支払っています。このため、地方の安い固定費との差額がそのまま社員の利益になります。その結果、優秀な人手が欲しい東京の会社にとっても、生活面や仕事面で満足できる仕事を得られる社員にとっても、両方にとって嬉しい状況に繋がるというのが、リモートワークのメリットの1つだと考えています。

Q. リモートワークを行ううえで課題は何がありますか?

A. リモートワークを行っていると人間としての交流が希薄になってしまうというのが課題であると思います。例えば、オフィスがあれば毎日同僚や上司と顔をあわせることができ、交流が生まれます。しかし、リモートワークでは孤独になりがちで、会うのは友人や家族など限られてしまいます。リモートワークは仕事の効率を求める面では最適化可能ですが、良くも悪くもカジュアルな交流(人と話す など)が少なくなるという面もあるので、この部分に気をつけています。しかし、これの影響を数字で測ることは難しく、また、すべての人がカジュアルな交流を求めているわけではないので、個々人に合わせて対応をするのがリモートワークの体制を取り組むうえで重要かなと考えています。

Q. その課題を解決するうえで心がけていることはありますか?

A. 僕の場合、沖縄にRuby/RailsのオープンソースコミュニティであるOkinawa.rbを2011年に立ち上げました。現在も沖縄に在住または滞在しているRuby/Railsに精通している方々の情報交換の場を定期的に設けています。この前は台湾からRubyKaigiに登壇した著名なエンジニアも来てくれました。この取り組みはとても社員やコミュニティに喜ばれており、知らない人と会ったり、新しい知識を共有するという場を設けることが、リモートワークで不足しがちなカジュアルな交流を促しているのかもしれません (が、数字で測ることはできないので難しいところですね…)。

Q. 社員共通で使っているツールやアプリなどはありますか?

A. マイクやカメラ、集音機器や広角レンズなど、コミュニケーションで使う道具には少しこだわっています。また、情報共有は基本的に Idobata.io(https://idobata.io/ja/home)を使っています。他には Qiita:Team(https://teams.qiita.com/)や Appear.in (https://appear.in/) を使ったりしています。業務に関するほとんどの情報は、idobataに流れるようになっています。

Q. 最後にリモートワークについて一言お願いいたします。

A. リモートワークには良い面も悪い面もあります。銀の弾丸ではありません。良い面は積極的に活かしつつ、一方で、悪い面にもしっかりと目を向けていく必要があると思います。また、最近はリモートワークに関する知見も徐々に共有されるようになってきましたが、個々のケースに寄るところも大きく、まだまだ暗中模索な部分もあるように感じます。そういったノウハウを共有し、リモートワークをうまく活かしていける組織が増え、社会的にも一般に認知されるようになっていけたら良いなと考えています。

安川さん、ご協力ありがとうございました!

YassLab.代表 安川 要平氏
早稲田大学大学院 基幹理工学研究科卒 (情報理工学修士)。米国イリノイ州のリベラルアーツカレッジ留学中に震災対策アプリを開発し、震災の翌日に公開。そのアプリのヒットを契機に、帰国後、東京と沖縄を拠点にした事務所「ヤスラボ」を開業。主に教育/教材制作・アジャイル開発・翻訳技術研究の3つの事業を展開している。現在は、リモートで開発・運営できる体制を整えながら継続的翻訳システムの開発に取り組んでいる。

リンク
YassLab http://yasslab.jp/ja/
事業実績 http://yasslab.jp/ja/works/
Okinawa.rb http://ruby.okinawa/
Rails チュートリアル http://railstutorial.jp/
Rails ガイド http://railsguides.jp/

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