近年VC(ベンチャーキャピタル)から多額の資金調達を行い、ビジネスを成功させるベンチャー企業が増えています。
VCからの資金調達にはどのような特徴があるのでしょうか。
資金調達の方法はいくつもある
これから起業しようと考えている、もしくはすでに起業していて新たな事業に手を伸ばしたいと考えている、そのような場合もっとも現実的な問題として立ちはだかるのが「資金調達」です。
強い情熱や優秀な人材、革新的なアイディアがそろっていても、お金がなければ何もできない現実があります。
資金調達についてシビアに考えることは、経営者やこれから起業を目指す方にとってもっとも重要なことです。
資金調達の方法には、銀行からの融資や経営者の自己資金の投入、政府の補助金制度、VC(ベンチャーキャピタル)のような外部の投資家からの投資、の4つのパターンがあります。
VCとは成長している/成長の見込みのあるベンチャーに投資して、最終的にはベンチャーを上場もしくは、買収させることで手放し、資金を回収する投資家/投資会社/金融機関などのことです。
そもそもベンチャーに限らず、企業の資金調達の方法には大きく「増資」か「借入」の2つがあります。
増資と借入には、3つの違いがあります。
- 返済義務の有無
- 議決権の有無
- 評価軸の違い
まず、増資には経営者による自己資金の投入か、もしくはVCのような投資家からの投資の2つがありますが、増資による資金調達には資金の返済義務がありません。
一方で借入は、銀行からお金を融資してもらうということですが、当然銀行にお金を返す必要があります。
外部から資金調達するならば、VCからの投資か銀行からの借入の2パターンになりますが、返済義務がないという点では、VCからの投資の方が有利です。
しかし、VCのような外部の投資家から資金調達すると、投資家に「議決権」が付与されてしまいます。
VCから資金調達するということは、調達したお金と引き替えにVCに株式を譲渡するということになります。
つまりVCは株主になります。
株主であるということは、株主総会における議決権を保有するということです。
つまり、株主総会を通じて企業の経営に口を出すことができるようになるのです。
金融機関からの借入ならば、銀行が経営に関わることはあまりありませんので、増資と借入にはこの点でも違いがあるのです。
さらに、投資・融資時の評価軸が異なるという違いがあります。
銀行が融資する企業に対して求めるのは「安定性」です。
その事業が継続的に黒字を出し続けることができるのか、つまり返済能力はあるのか、この点がもっとも重要になります。
これに対してVCによる投資では、その事業の成長性が重要になります。
VCは最終的に投資した企業を上場、もしくは他の企業に買収させることで利益を得ますので、その会社が大きく成長してくれないことには、利益をあげることができません。
事業が成長せず失敗に終われば、投資したお金は返ってきません。
そのため、事業の成長性が最も重要な評価点になるのです。
投資家からの資金調達にはどのようなメリット/デメリットがあるか
VCと一言で言っても、国内にもさまざまなものがあります。
銀行や証券会社のグループ会社のVCでは、三井住友銀行グループのSMBCベンチャーキャピタルや、大和証券系の大和企業投資、みずほ銀行系のみずほキャピタルなどです。
他にも事業会社のグループ会社で、LINEやDeNAのようなIT系事業会社や、商社のVCが多くあります。
そして、VCの中でも積極的にベンチャーに投資するのが、独立系と言われるVCです。
独立系も、日本アジア投資、日本ベンチャーキャピタルなど複数があります。
近年、このようなVCから投資を受けて、ビジネスを成功させるベンチャーは多くあります。
たとえば、メルカリです。
メルカリは2016年、三井物産や日本政策投資銀行、グロービス・キャピタル・パートナーズなどのVCから、合計約84億円の資金を調達しました。
ITスタートアップとしては、近年まれに見る大型の資金調達でした。
他にもgumi、クラウドワークスなど有力ベンチャーの多くはVCからの資金調達を積極的に活用して創業・事業拡大しています。
このように、VCからの資金調達には、以下のような魅力があります。
メリット
- 資金の返済義務がない
- 成長のためのノウハウや支援を得ることができる
- 追加の資金調達も可能
- 提携先も見つけやすくなる
- 成功すれば多額の調達が可能
まず、VCからの資金調達は増資であり借入ではないため、当然資金の返済は必要ありません。
借入をすると、いつか返さなければならないという資金繰りのリスクがある上に、返済時には利息もつきます。
VCからの投資ならば、このような負担はありません。
また、VCから評価されているということが分かれば、他のVCや金融機関からの資金調達も行いやすくなります。
さらに、VCは投資した会社を成長させなければ自分たちも儲けることができないため、成長させるためのノウハウを提供したり、経営支援を行ったり、VCという多くの企業と携わる強みを活かして、事業の提携先を紹介してくれたりするのも魅力です。
お金以外の面でもメリットがあるのです。
ただしメリットだけではありません。
当然デメリットも存在します。
デメリット
- 報酬の支払いの必要性
- VCの意向が経営に反映される
- 見通しが悪くなったときに資金回収されるリスク
VCによりますが、投資が成功して事業が成長したときに、成功報酬が求められるVCも存在します。
そのようなVCの場合は、借入にはない費用がかさんでしまいます。
また、VCから出資を受けた場合VCは議決権を得ることになることは、先ほど紹介した通りです。
そのため、VCの意向が経営に反映されるようになります。
自己資金や借入だけで経営していれば、自分の考えだけで経営することができますが、VCを利用すれば思い通りの経営ができなくなる可能性もあるということです。
さらに、経営の見通しが悪くなったときに、VCがさっさと資金を引き揚げてしまう可能性もあります。
資金が回収されてしまえば、経営が立ちゆかなくなるかもしれません。
VCからの資金調達は、このようなデメリットも知った上で検討しなければなりません。
ここまでVCの基本的な特徴について解説しました。
次回はVCを実際に利用するにはどうすればいいか、より詳しく解説していきます。