2014年4月1日から消費税が8%になりました。今後さらに10%に増やされることも決まっていますが、フリーランス(個人事業主)にとって重要なのは、消費税の納税はどのような仕組みになっているのか、どのような取引で納税しなければならないのか、という点です。今回は特にこれから独立するフリーランスの方のために、消費税の基本を解説します。
消費税の課税業者と免税業者
会社員の方にとっては消費税はものを買ったときに支払うだけでいいものです。しかし企業の経営者やフリーランスの方にとっては、受け取った消費税を自分で納税しなければならないものでもあります。しかしすべてのフリーランスの人が消費税を納税しなければならないわけではありません。消費税には課税事業者と免税事業者がいます。
課税事業者
- 2年前の課税売上高1000万円以上
- 1年前の1月1日〜6月31日の課税売上高が1000万円以上
この2つのどちらかに該当した場合に、その事業者は課税事業者として消費税を納税しなければなりません。しかし以下の免税事業者の条件に該当すれば、消費税を納税する必要はありません。
免税事業者
- 開業して2年以下しかたっていない
- 課税売上高が1000万円以下
つまり開業して2年間は消費税を納税する必要はなく、また課税売上高が1000万円を超えなければ、これも消費税納税の義務が免除されるのです。多くのフリーランスの方は免税事業者に該当するかもしれません。2015年9月現在を基準にすると、2013年の1月1日〜12月31日の課税売上高が1000万円以下であり、2014年の1月1日〜6月31日までの課税売上高が1000万円以下ならば、免税事業者になります。
ただし免税事業者でも消費税を請求することは認められています。つまり商品を販売したときに、相手から消費税込みの売上を受け取っていいのです。しかし納税の義務はないため、消費税分は自分の取り分にすることができます。
消費税のかかる取引とかからない取引
またすべての取引に消費税が課税されるわけでもありません。消費税は事業として継続的に行なった国内での取引に課税されるものです。つまり個人がフリーマーケットやネットオークションでときどきいらないものを売ったり、古本を古本屋さんに売っても、消費税を納税する必要はありません。ただしせどりやヤフオクでの商品販売を事業として行なっていて売上が1000万円以上ある、などの場合はもちろん納税しなければなりません。
また以下のような取引には消費税は課税されません。
- 海外との取引
- 学校関連費(入学金、授業料など)
- 減価償却費、租税公課
- 土地の譲渡など
- 保険料
- 切手、銀行の利息、行政手数料
つまり年間売上1000万円を超えるフリーランスの方や企業が行なう事業の取引には、ほぼすべて課税されます。法人税は赤字企業は納める必要はありませんが、消費税は課税事業者ならば赤字・黒字に限らずすべての事業者が納税しなければなりません。
消費税の計算
自分が消費税の課税事業者となっているという方は、次に自分が「簡易課税制度」を利用できるかどうかを判断する必要があります。これが利用できれば、消費税の計算の手間を大幅に減らすことができます。簡易課税事業者は以下の条件を満たす必要があります。
- 2年前の課税売上高が5000万円以下
- 前年の12月31日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している
多くのフリーランスの方や法人を設立して間もない方は、売上高が5000万円を超えることはないと思いますので、前年末までに届出書を提出することで、簡易課税制度を利用することができます。簡易課税制度を利用した場合、以下のような計算式で納税額が計算されます。
消費税の納税額=(課税売上高×8%)ー(課税売上高×8%×みなし仕入れ率)
業種によって見なし仕入れ率は異なりますが、みなし仕入れ率で大雑把に計算するため計算は簡単になります。しかし本来の税額計算よりも納税額が多くなる場合と少なくなる場合がありますので、どちらにメリットがあるのか検討することが大事です。ただほとんど納税額が変わらなさそうであれば、かんたんな簡易課税制度を利用して手間を大幅にカットする方がいいですね。課税業者に該当するフリーランスの方の多くは、簡易課税制度を利用する方がメリットが大きいと思います。簡易課税制度を利用しない場合は計算が複雑になりますので、今回は割愛します。
消費税の節税は可能?
フリーランスの方はできるだけ納税額を少なくしたいというのが本音だと思いますが、消費税の節税方法はかなり限定されてしまいます。一般的に利用できる節税方法としては、まず課税事業者とならないように売上を調整するという方法があります。これは売上高が1000万円前後の方しか利用できませんが、年末に売上が1000万円を超えそうならば、仕事を断ったり商品やサービスの値段を引き下げたりすることで、免税事業者の範囲に納めることも可能です。
また従業員を派遣社員にしてしまうという方法もあります。派遣社員を雇うと派遣社員に支払う給与が仕入れ控除されて、消費税がかからなくなるのです。そのため自分で従業員を雇うよりも派遣社員を雇う方が消費税は節税できます。同じく従業員を雇ってさせる分の仕事を外注してしまうのも節税になります。もちろん派遣会社の利用や仕事の外注は消費税節税の面からのみ考えることができるものではありませんが、法律上はそのような方法もあるということです。そのため増税によって派遣社員は増加したと言われています。
これから独立する、最近独立したというフリーランスの方は、今回紹介した消費税の基本をよく理解して、納税時に慌てることのないようにしましょう。