Flat White Economy ヒップスターが英国経済の発展の鍵

フラットホワイト、ヒップスター、この2つの言葉をご存知でしょうか?
フラットホワイトエコノミーは、ロンドンのシリコンラウンドアバウトと呼ばれる,オールドストリートを中心にロンドン東部のテクノロジー、デジタルメディア、クリエイティブ系のスタートアップ企業で働くヒップスターと呼ばれる若者たちの経済のことを指し、彼らの好むフラットホワイトという飲み物から名付けられました。

フラットホワイト
オーストリアとニュージーランドのコーヒーシーンから出現したコーヒーの一種。カフェラッテよりも入っているエスプレッソの量が多い。

ヒップスター
最新の流行に敏感でなおかつ主流の文化に背を向けた20代30代の若者。

フラットホワイトエコノミー

2007/8年の経済危機以来、それ迄イギリスの経済を支えてきた主流企業がリストラを重ねながらのろのろと復興の道をたどる中、フラットホワイトエコノミーは雇用創出の要石として、ロンドン経済成長に大きな影響を持つようになりました。EC1Vというロンドンの小さな郵便番号エリアだけでも32000の新しい企業が2012年から2014年の間に生まれました。
これは、イギリス2大都市であるマンチェスターとニューカッスルから同期間に創出された会社数よりも多いのです。

ロンドンとホワイトエコノミー

なぜロンドンでフラットホワイトエコノミーが急成長したのでしょうか。「フラットホワイトエコノミー」の著者であるマクウィリアム氏はこう語ります。
「とてもオーソドックスな見解にみえるかもしれませんが,需要供給が理由だと私は思います。需要の点でいうと、イギリスはデジタルビジネスにおいてユニークな環境にあると思います。ほかの国々と比べて、イギリスは最も高いレベルのオンライン小売業を行っているのです。ある研究調査によると、来年にはオンライン小売業が全体のほぼ4分の1の割合を占めることになると予測しています。これはドイツの2倍、アメリカや日本の3倍にあたります。イギリス人のオンラインショップ好きが、デジタルマーケティングと広告の需要の理由なのです。」

「供給の点でいうと、学歴のある独創力を持った若者たちがヨーロッパ各地からロンドンに集まってきたことにあります。なぜロンドンなのか?それは物価が安いとか住みやすいという理由ではありません。ロンドンはクールな都市、かっこいい都市だからです。彼等の愛飲するフラットホワイトを見ればわかるでしょう。単なるミルクコーヒー一杯にどうして高い金を払うのか?それはフラットホワイトが彼等のライフスタイルを象徴するかっこいい飲み物だからです。」

フラットホワイターとは

ロンドンの大半のフラットホワイター達は、ロンドン東部にあるアパートや部屋を他のフラットホワイターと共同で借りて住んでいます。
テクノロジーを愛する彼らは、部屋代を節約したお金をスマホ、タブレット、ノートパソコンなどに使い、彼らのライフスタイルの中心地ともいえるカフェで一日の大半をリモートワークや社交に費やします。
こうしたカフェは無料で無線LANが使え、大きなテーブルは他の人と共同で使うようにアレンジされており、フラットホワイターにとって交友関係を広げる最適な場所。
ロンドンのコワーキングオフィスはこのカフェをモデルにして発展したと言ってもいいでしょう。

80年代のヤッピーやロンドンの金融銀行街で働くシティーバンカーとは違い、彼らは大金を稼ぎ、ポルシェを乗り回し、高級レストランでシャンペンを飲むといったライフスタイルに興味がありません。
彼等は車の代わりに固定ギア自転車に乗り、コーヒーの味にこだわり、ファッション、カルチャー、食文化の流行に敏感。
「普通」であることを嫌い、19世紀の紳士のような長いひげを生やし、腕には入れ墨。彼等の嗜好のニーズあわせて、ロンドン東部にはここ10年間雨後の筍のように、コワーキングオフィス、カフェ、レストラン、バーなどが急増しました。
これがさらにこの地域の雇用創出のきっかけになったのです。

フラットホワイトエコノミーの今後

フラットホワイトエコノミーはテクノロジー、カルチャーそしてマーケティングの混合であり、今迄の一般的な企業規範ではくぐれません。
イギリスにおいてデジタルマーケティングが古典的なメディア広告を追い越してもう3年目。
このデジタルマーケティングの成長が多くのスタートアップやベンチャー企業をロンドンに創出させた原因だと見てもおかしくないでしょう。

とはいえ,今後もロンドンがフラットホワイトエコノミーの中心地でありつづけ、またその成長を維持することができるかについては、疑問の声があがっています。
インターネットの発展が地理的な制約からロンドン以外の地方都市を開放したこと、ロンドンで活動するためにかかる高いコストの上昇。
この2つの要素がロンドンでのフラットホワイトエコノミーの今後の成長の弊害になることと思われます。

現時点では、ロンドンに集中する才能の豊富さが他の都市と比較できないほど素晴らしいことから、投資者達は高いコストにもかかわらず、ロンドンに投資する選択をしています。
この才能の供給が投資者達の要求を満たすかぎり、ロンドンのフラットホワイトエコノミーの重要性は保たれるだろうというのが現在の一般的な見解です。

その独特な服装とライブスタイルからヒップスターは何かと「かっこつけてうぬぼれている」と一般の評判が今ひとつ良くありません。
しかし、彼等がロンドン経済の活性化の中心であり、彼等の利益よりもクリエイティブであること、革新性、柔軟性を重要視するビジネスに対する姿勢が経済界に大きな刺激を与えていることは確かです。
好き嫌いはともかく、ヒップスターがフラットホワイトエコノミーの要である以上、彼等の事業がその独特なビジネススタイルを維持しながら成長することが英国経済の発展の鍵であり、彼等の存在がポジティブであることは誰もが否定できないでしょう。
今後もホワイトエコノミーとヒップスターの動向は注目の的となりそうです。

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Source: http://beardpictures.com/portfolio/hipster-beard-urban-bike/

Image credit: Rob Bye via unsplash

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