月収30万円の正社員を雇うのに費用はいくらかかるのか

よく「正社員を雇うとその数倍のコストがかかる」「社員は会社が自分にかけているお金を知っておくべきだ」などということが話題になることがあります。

しかし実際になぜ正社員の雇用に給与の数倍ものお金がかかるのか、説明できる人は少ないです。

月収30万円の社員にはどれだけのお金がかかるのでしょうか。


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月収30万円の正社員を雇うのに費用はいくらかかるのか

正社員を雇うと2倍のコストがかかる?

ベンチャー企業などでは急速に事業を拡大し、社員を増やしていくところが多くあります。またフリーランス(個人事業主)や一人親方の企業でも、仕事が増えて社員の雇用を考えることがあると思います。

事業が成長していれば事業に直接関係する営業や製品開発の社員はもちろん、それらの仕事を支える経理や総務など直接お金を稼がない社員も雇い入れる必要が出てくるのは当然です。

そこで問題となるのが、社員を雇用するときにかかるコストです。よく社員を一人雇用するのに2倍、3倍のコストがかかると言われます。このようにコストが倍増するのは、社会保険料などの、給与以外のコストが非常に大きいからです。

業務拡大のうえで従業員の雇用は必須なのですが、実際にどのくらいの金がかかるのかを分かったうえで計画的に雇用しなければ、予想以上にコストがかかって本業を圧迫する可能性があるのです。

実際に社員を雇用すると、どれだけの費用がかかるのでしょうか。

月収30万円正社員の社会保険料

まず必要となるのが社会保険の費用になります。社会保険には「労災保険」「雇用保険」「厚生年金」「健康保険」の4つがあり、それぞれの保険料は労働者と事業者とで分担して負担することになっています

負担の割合は保険ごとに決まっていますが、業種によっても異なります。たとえばIT関連企業ならば以下のようになります。

【労災保険】

  • 賃金総額の1000分の2.5(全額事業者負担)

【雇用保険】

  • 賃金総額の1000分の13.5(事業者8.5、労働者5)

【厚生年金】

  • 月額給与の約1000分の178(事業者と労働者で折半)

【健康保険】

  • 月額給与の約1000分の10(事業者と労働者で折半)

負担の大きな厚生年金と健康保険は雇用者と従業員で半額ずつ負担することになります。労災保険、雇用保険は「賃金総額」として、つまり給与だけでなく各種手当てや賞与も含まれて計算されます。厚生年金、健康保険は毎月の給与額で決まります。

社会保険料の事業主負担分を計算すると、月収30万円で賞与や手当を含めて年収460万円の正社員の場合は、毎年「55万1000円」かかることになります(2016年1月現在)。内訳は雇用保険と労災保険が合計5万600円、厚生年金と健康保険が合計50万400円かかる計算になります。

福利厚生費

従業員にかかるコストはこれだけではありません。たとえば多くの企業では退職金の積み立ても行われます。

中小企業の現在の退職金は平均1200万円〜1400万円という調査結果が出ています。これは定年退職の場合なので金額が大きくなっていますが、仮に40年間の雇用で1000万円の退職金を積み立てるとすると、単純計算で毎年25万円を積み立てる必要があることが分かります。

さらに通勤手当や住宅手当などがかかります。これが毎月3万円かかるとすると、年間36万円です。これだけで合計60万円以上になり、社会保険料とトータルで110万円以上になります。

直接従業員に支払うことはなくても、たとえば会社の備品や営業用の車、オフィスの水道光熱費、研修費用などもかかります。従業員が1人や2人ならば問題ありませんが、もっと増えてくれば経理や総務を行う専門の部署の人員を雇用する必要も出てきます。

これらの間接部門・間接人員は直接利益を生み出さないため、その分の人件費などはまるまるコストになります。

整理すると従業員を1人増やすことによるコストは、給与以外に、

  1. 社会保険料
  2. 福利厚生や設備費用
  3. 間接部門の費用

が増えることになり、従業員に支払う給与の1.5倍や2倍になるという一般的な主張はおおげさではないのです。

コストを抑えるにはどうするか

社会保険(厚生年金・健康保険)は社員にかかるコストの大きな部分を占めますが、社会保険(厚生年金・健康保険)はどのような事業主でも強制的に加入しなければならないというわけではありません。

ポイントは常時雇用している労働者が「5人未満」か「5人以上」かです。法人ならば5人未満でも必ず社会保険に加入しなければなりませんが、個人事業主ならば労働者は5人未満ならば、厚生年金・健康保険は強制適用ではなく任意適用です。

もちろん従業員を雇用するうえで社会保険に加入していれば、人が集まりやすくはなりますが、今回紹介したように従業員を雇用するコストは非常に大きいため、必ずしも加入する必要はありません。

また従業員にも正社員、派遣社員、バイト・パートなどいくつかの種類があり、正社員に比べればもちろんバイト・パートの方がコストは小さくなります。労災保険、雇用保険はバイト・パートでも条件によって適用されることが多いですが、厚生年金・健康保険の場合は「常時的な使用関係」にない場合、加入義務はありません。

常時的使用関係であるかどうかは、以下の両方の条件に当てはまった場合です。

  • 1日もしくは1週間の労働時間が正社員の4分の3以上である
  • 1ヶ月の労働日数が正社員の4分の3以上である

逆に言えばこれ以下の労働時間・日数のバイト・パートならば、正社員に比べて社会保険料分のコストを大幅に削減できるということです。ただ業務上正社員を雇用するしかないケースも多くあると思います。

そのようなケースでは正社員を雇用することで常時必要となるコストがどれだけになるのか、特に赤字が一定期間続いても雇用し続けることは可能かどうか、資金計画をよく練ったうえで決定することが必要不可欠です。

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まとめ

繰り返しになりますが従業員を雇用することは大きな負担になりますので、小さな会社やフリーランス(個人事業主)の方は、アウトソーシングやITの活用など他の手段で代替できないか、よく検討する必要がありそうです。

もし、売上拡大の局面で従業員の雇用が必要だと感じたのであれば、顧問税理士をとるなどして費用のシミュレーション、雇用後の手続き等を依頼してみるといいでしょう。

いざ、というときのためにも、無料で税理士を紹介してくれるサービスを利用するなどして、プロに解決してもらうのが得策だと言えます。


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