被災地への義援金は寄付金控除、損金算入の対象になる

熊本県で発生した地震は、広い範囲に甚大な被害をもたらしています。
私たちがもっとも簡単にできる支援は、義援金を送ることです。
企業も個人も、義援金の支出は寄付金控除や損金参入の対象になります。
遠方からできる支援は限られていますが、義援金を送ることは誰にでもできます。
義援金支出について、個人・企業の税制の仕組みを解説します。

誰にでもできる支援、義援金

4月14日、熊本県で震度7を記録する地震が発生しました。翌15日から16日にかけての深夜には震度6級の地震が複数回発生し、熊本県の広い範囲に甚大な被害を及ぼしました。
交通インフラは道路、橋、飛行場、鉄道、新幹線と多くが再開が見込めないほど損傷し、その他生活インフラや家はもちろんのこと、熊本の産業のひとつである豊かな自然や熊本城、阿蘇神社など多くの観光地も痛ましい被害を受けました。
今後の復興には、長い時間と莫大なお金が必要です。

17日現在、すでに支援物資やボランティアの募集はかけられ、全国から集まってきていますが、それができない方にもできることはお金を送ることです。
個人の場合は「ふるさと納税」で有名になった「寄付金控除」を使うことで、送った義援金は寄付金控除の対象になります。
また法人の場合は、一定の条件の上で全額損金算入することができます。
まずは個人の場合から仕組みをご紹介します。

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個人の場合は寄付金控除が適用

個人が被災地に義援金を送った場合、それが「特定寄付金」に該当する場合は、寄付金控除の制度で、所得から寄付した額を控除することができます。寄付金控除はふるさと納税で有名になった制度ですが、以下のような計算式で計算されます。

「1年間の寄付金額」—「2000円」=「寄付金控除額」

つまり、寄付した金額から2000円を引いた額が寄付金控除として、その年の所得から差し引くことができるということです。5万円寄付したならば4万8000円を所得から差し引くことができるため、寄付金控除額に所得税率をかけた分だけ、納税額が安くなります。ただし寄付金控除には、
①自分で確定申告する必要がある
②その年の所得の40%までが限度
という注意点があります。

「特定寄付金」とは、国や地上公共団体、公益社団法人、独立行政法人、認定NPO法人などに対する寄付金のことで、公共性の高い寄付金のことと考えることができます。
つまりは、被災地への義援金として国や地方公共団体、日本赤十字社などを通して義援金を支出する場合は特定寄付金に該当し、寄付金控除が適用されます。
個人事業主で義援金を支出した場合も、この寄付金控除の制度が適用されます。

また、2011年の東日本大震災のときには、特例として被災地に対する義援金に限っては、通常の寄付金控除をさらに拡充した「震災関連寄付金」という制度が適用されました。
今回も震災の特例として、制度が適用される可能性もありますので、引き続き政府の動きを注視する必要がありそうです。

法人の場合は全額損金算入

法人の場合も、寄付金に対しては優遇措置があります。法人による寄付金には、4つの種類があります。

①国・地方公共団体への寄付
②財務大臣指定の寄付
③特定公益増進法人への寄付
④一般の寄付

③と④は損金算入できる額に上限があるのですが、①と②の寄付は公共性の高い、社会貢献の意味合いの強い寄付であるため、全額を損金算入することができます。
企業が被災地支援するもっとも簡単かつメリットのある方法であり、利用しやすいものです。

企業として被災地に寄付したいという経営者の方は、被災地の地方自治体に対して寄付する方法がもっとも確実です。
もしくは日本赤十字社を通して寄付することもできます。
どのような団体を通じて寄付しても全額損金算入できるというわけではありませんので、確実な方法で寄付しましょう。
振込先・振り込み方法は以下に詳しく記載されていますので、ご参照ください。

熊本県「平成28年度熊本地震義援金募集について」
http://www.pref.kumamoto.jp/kiji_15416.html

日本赤十字社「平成28年熊本地震災害義援金」
http://www.jrc.or.jp/contribute/help/28/

義援金はイメージアップ戦略か?

ネット上では企業の義援金は、節税対策だと批判されることがあります。
しかし、企業は利益追求主体である以上、まったく自己に利益のない行動はとることができませんし、企業による義援金は企業にメリットがあることを別にしても、送付先の地域に対しては恩恵のあるものです。
さらに、そもそも義援金が全額損金参入できるとしても、会社のお金を事業以外のことに使っているという事実には変わりありません。

また、企業が個人からお金を集めて寄付することがあります。
この行為に対して、個人から集めたお金を全額損金算入することで節税をしていると批判されることもありますが、これも誤りです。
企業が寄付金を集めた時点でそれは雑収入として計上され、集めた分を含めて損金算入することはできないからです。
企業にしろ、個人にしろ、義援金を送るという行為は批判の対象になるようなことではありません。

この記事を読む方の中で、どのような形で支援すればいいか分からない、と考えている方が一人でもいるのならば、義援金という形で支援するという手段を考えてみてください。
まずは自分にできるもっとも身近な方法で、被災地を応援しましょう。

Image Credit: 野呂賢治撮影(毎日新聞社/アフロ) via Yahoo news

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