シンギュラリティ – 人工知能が人類を超える日

「シンギュラリティ(Singularity)」という言葉をご存知でしょうか。
先月行われたソフトバンクの第36回定時株主総会では、孫社長が株主にこの質問を投げかけたようです。
その際は会場の約3%の手が挙がったそうですが、ソフトバンクの株主ですら3%ですので一般認知度は相当低いといえるでしょう。
ただ、この言葉は「ビッグデータ」や「IoT」のように、今後普及してくる可能性を秘めています。
孫社長はシンギュラリティを「人類最大のパラダイムシフト」と表現しています。
孫社長の社長続投の理由ともいえる、シンギュラリティについて説明していきましょう。

人工知能が人類を超える日

シンギュラリティは、日本語で「(技術的)特異点」といいます。
つまり、人工知能が人類の知能を超える時点のこと。
この概念は、米国の数学者・ヴァーナー・ヴィンジ(Vernor Vinge)氏と、発明者でGoogleにて人工知能を研究するレイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)氏によって提示されました。

彼らは、シンギュラリティでは「人類の科学技術の進展が生物学的限界を超える」と予言しました。
人類の知能を超える究極の人工知能が誕生し、その人工知能は自分より優秀な人工知能を作り上げます。
その人工知能は自分よりさらに優秀な人工知能を作り、その人工知能はもっと優秀なものを・・・と無限ループを繰り返します。
人間の脳では理解できない未知の未来が訪れるのです。

冒頭にあげた孫社長の言葉を借りれば、「知識」だけでなく「知恵」でもテクノロジーが人間を超えることになります。
いまやGoogle検索すれば簡単に求める知識が入手できます。
ただ、課題をいかに解決するかまでは教えてくれません。
シンギュラリティの到来により、人間の知恵を上回る方法を人工知能が導き出せるといいます。
想像しにくいですが、囲碁やチェスで人工知能が人間に勝利しているニュースは予兆なのかもしれません。

遠い未来の話ではない!?

シンギュラリティがいつ起こるのか、という問いに対し、カーツワイル氏は2045年に到来すると答えます。
この年号は、「ムーアの法則」と「収穫加速の法則」の2つの法則に基づいています。
ムーアの法則は、インテルの創業者ゴードン・ムーア氏が提唱した「集積回路上のトランジスタ数は18か月ごとに倍になる」という法則。
収穫加速の法則は、カーツワイル氏自ら発見した「技術的進歩が指数関数的成長パターンをもつ」という歴史研究にしたがった法則。
これらの法則から「2045年のシンギュラリティ到来」を導き出しています。

一方、ソフトバンクの孫社長は「1チップあたりのトランジスタの数が2018年に人の脳細胞の数を超え、人工知能が人類を追い抜く」と予測するほか、人工知能をもつ「スマートロボット」の数が2040年に全人口を超えると主張します。

いずれにせよ、シンギュラリティは遥か遠い未来の話ではなく、我々が生きている内に起こりうるとされています。

人工知能は敵か味方か

ここまで読んで、「まるでSFの話だ」という印象を持たれる方は多いのではないでしょうか。
実際、シンギュラリティはSF映画の題材にされることが多いです。
代表例としては、「マトリックス」や「ターミネーター」があります。
どちらの作品でも、進化した人工知能が人類を脅かす設定となっており、シンギュラリティが負のシナリオをもたらす内容です。

シンギュラリティが訪れるとすれば、SFが現実になるような状況ですから、人工知能が暴走するかもしれません。
人間が責任を持って制御する必要がありそうです。
医療や経営といった分野でのアドバイスなど、人間社会に貢献する強力なパートナーとして活用するのが理想的であり、人工知能を敵に回せば、これ以上恐ろしいものはありません。
人類以上の知能をもつといえど、あくまで人間の支配下におくことが、シンギュラリティを迎える際に必要となるでしょう。

その時人類は

優秀な人工知能が活躍することは、これまで人のやっていた仕事が奪われることにもなります。
英オックスフォード大学で人工知能を研究するマイケル・A・オズボーン氏の論文「雇用の未来—コンピューター化によって仕事は失われるのか」では、人工知能の発達によって10年後に消える職業を予測しています。
米国の雇用者を対象に702職種が今後どれだけ自動化されるか分析し、今後10〜20年程度で約47%の仕事が自動化される結論を導きました。
また、職種別に「消える・なくなる仕事」と「生き残る仕事」がまとめられています。

主な「消える・なくなる仕事」は、テレマーケッター、会計士、小売り販売業者、タクシー運転手、経理担当者など、「生き残る仕事」は医師、経営者、教師、心理カウンセラーなどとなっています。
全体的な傾向として、細かい数字を扱う業務、単純反復的な作業はコンピューターの得意分野であり、代替されやすいといえます。
逆に、人同士のコミュニケーションが重視される職種は人間という価値が求められるため、どんなに賢い人工知能であっても代替されにくい結果になっています。
また、人間特有のクリエイティビティが発揮される俳優やデザイナーも生き残ると分析されています。

消える・なくなる一方で、新たに生まれる職業もあるでしょう。
Webデザイナーやユーチューバーといった仕事は、数年前には想像もできなかったはずです。
10〜20年後には、人工知能技術の発展に伴い、今は聞いたこともない新しい職業が生まれる可能性もあります。

シンギュラリティに向けて時代が移り変わる中で、今後人の働き方にも大きな影響がありそうです。
「人類最大のパラダイムシフト」と称されるシンギュラリティ時代においては、我々人類も大きな決断を迫られるかもしれません。

参考リンク
http://webcast.softbank.jp/ja/shareholder/20160622/index.html
http://logmi.jp/149335
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/198610/062200118/
wikipedia 技術的特異点
シンギュラリティ(Technological Singularity) | IoT
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40925

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