これまでリモートワーカーは、オフィスワーカーほどよくは働かないものだと見なされる傾向がありました。
しかし、最近になって、この傾向に変化が生じていることがDell社やIntel社の調査で明らかになりました。
これは、米国、英国、フランス、ドイツ、日本、ブラジル、中国、インド、ロシア、トルコ、アラブ首長国連邦、南アフリカの12カ国における大・中小企業でフルタイムで働く4764人を対象に行われた調査結果をもとにしています。
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リモートワーカーの生産性が認められ始めている
世界的に見て、被雇用者の半数以上が、リモートワークも、オフィスワークと同等、あるいはそれ以上に生産性を上げていると実感しており、リモートワーカー自身も、自分にとって快適な環境から働くことが生産性の向上につながっていると感じています。
リモートワークを少しでも経験している人たちの半数は、オフィスで働くよりも生産性が上がるとしており、リモートワークでもオフィスワークでも同じように生産性は上がるとする人は全体の36%。
逆に、リモートワークはオフィスワークよりも生産性が落ちると感じる人は14%でした。
リモートワークの生産性が高い理由
TECHnalysisリサーチの創設者兼チーフ・アナリストのボブ・オドネル氏は、今では多くのリモートワーカーが最新の機器を備えており、彼らのホームオフィスのインターネットは、企業のインターネットスピードよりも高速になっていると指摘しています。
こういった事情で、最近は以前よりもより多くの人々が、より頻繁にリモートワークを試みる傾向があるのだと彼は解説します。
リモートワークの利点と欠点
リモートワーカーは、オフィスの外から働く利点をたくさん挙げています。
この調査結果によると、「睡眠時間が増えた」と答えた人は30%、「車を運転することが減った」人は40%、「ストレスが減った」と回答した人は46%いました。
しかし、リモートワークには、いくつかの欠点も挙げられます。
リモートワーカーの80%以上が、仕事中、配偶者や子供、両親やペットが同じ家の中にいて、邪魔されることがあると答えています。
また、20%が家から働いていると運動不足になり、38%が間食が増えてしまったとしています。
議論されることの多い生産性の問題に加えて、オフィスで働かないことが出世を遅らせると懸念する人が20%近くおり、23%の人がリモートワーカーは昇進の機会が少ないと感じています。
オフィスワークの場合
この調査はまた、平均的な労働者は少なくとも毎週、多少の時間でも家から働いていることも示しています。
オフィスで週平均32時間働いている労働者は、さらに週平均5時間、家からも働いているということです。
そして、リモートワーク同様、オフィスワークも邪魔は入ります。
オフィスワーカーの4分の3が、オフィスの自分のデスクで働くことを快適に感じていますが、48%が頻繁に同僚から邪魔されていると言っています。
この研究はさらに、オフィスが内部で働く人同士のコミュニケーションを図る助けにはあまりなっていないことも示しています。
オフィスワーカーの51%が、近くの席の同僚のところへ直接話しに行くよりも、インスタントメッセージやeメールでやり取りしています。
一方、リモートワーカーたちは、日中家から働くだけでなく、大半が勤務時間以後も働き続けています。
世界のワーカーの65%近くが、業務時間後も家で働いているそうです。
Intel社のユーザーエクスペリエンス米国ディレクターのジュヌビエーブ・ベル氏は、最近、オフィスワークとリモートワークの境が今まで以上にぼんやりしてきていると発言しています。
「特に知識労働や、ハイテク分野、創造的・芸術的分野では、労働の場は今やオフィスの中だけでなく、自宅、そして自宅以外の場所へと移行しつつあります。」
オフィスワークとリモートワークの生産性の比較
米国の例では、現在約3000万人の米国人、つまり5人に1人の米国労働者が、少なくとも週1回自宅からリモートワークで働いています。
この数は今後の5年間で63%増加すると予想されています。
このトレンドの中で、オフィスワークとリモートワークの生産性の比較は、たびたび取りざたされています。
2013年に米国スタンフォードの大学院生が行った研究では、中国のコールセンターの従業員の生産性が、9カ月間にわたって調査されました。
従業員の半数がオフィスから、残りの半数が自宅からリモートワークで同じ業務を行ったところ、リモートワークの方が13.5%以上多く電話をしたそうです。
また、35,000の学術論文を分析した他の研究では、最も広く引用されたベストの論文は、共同執筆者同士が近くの席に座っていた時に刺激作業が起こって、革新的なアイデアが生まれたものだと結論づけられています。
つまり生産性には、仕事の種類、従業員同士の人間関係など、あらゆるファクターが関わり合っているので、「会社経営者たちがリモートワークの指針を決定する際には、ケース・バイ・ケースで決めることが肝心だ」と、グローバル・ワークプレース・アナリスティックス社のケイト・リスター社長は勧めています。
「適材適所」という言葉がありますが、リモートワークを求める人が、出世の遅れなどを懸念することなく、働きたい場所や、最も生産性の上がる場所から安心して働けるシステムが広く浸透するといいですね。
参考http://www.businessnewsdaily.com/
http://sba.thehartford.com/
https://www.dell.com/learn/us/en/vn/corporate~secure~en/documents~infographics-evolving-workforce-productivity-2014.pdf