プログラマーのジェームス・ナイトさん(27)は最近、慣例を破るような行動をとりました。高い給与で知られているグーグルでのコーディングの仕事を辞めて、フリーランスになったのです。会社から支給される昼食も、数々の特典も、マンハッタンのオフィスからの百万ドルの景色も、もうありません。
ナイトさんはそれらの特典を捨てましたが、独立し、今ではグーグル時代の2倍の収入を得ています。そして、何よりも自由を手に入れました。3月に彼は、妻と欧州の飛び石旅行に出てリモートワークをする予定だそうです。
ハイテクの人材獲得戦争の加速で、大企業やスタートアップ企業は、トッププログラマーに高額の給与を支払っています。適切なスキルの組み合せをもつプログラマーの中には、時給千ドルという人もいるそうです。企業は優秀な人材をリクルートしつつ、失速したプロジェクトを前進させたり、競争力を得るために、独立したソフトウェア開発者にも目を向けています。
2014年から2024年までに、ソフトウェア開発者への需要は17%伸びる
昨年アーロン・ルビンさんは、クラウドベースのロジスティクス・スタートアップShipHero社を立ち上げるために、リクルーターのToptalを通じて、フリーランスのプログラマーを雇いました。「ニューヨークで才能あるプログラマーを3日以内に見つけることは不可能です。私が知っている才能ある人たちは、みんな仕事を持っていますからね。」
ナイトさんのような独立したプログラマーは、米国労働統計局によれば、5千300万人いるフリーランサー、つまり労働者全体の3人に1人に当たるギグ・エコノミーのエリート層を代表しているのです。
2007年のiPhoneの到来で、モバイルアプリへのプログラマーの必要性が急増しました。以来、ソフトウェアは、冷蔵庫、時計、アパレルの分野にまで広まり、それらのコードを書く人が必要になりました。2014年から2024年までに、ソフトウェア開発者への需要は17%伸びると予想されています。
フリーランスエージェンシー
よいエンジニアを手に入れるために、大企業は会社全体を買収をしてきました。いわゆるacqui-hiring(獲得雇用)です。どの企業も、エンジニアリングリクルーターを持ってはいますが、適切な人材を見つけるためにはお金と時間を要します。企業はフリーランスのエージェンシーに、一流のプログラマーを見つけてくれるよう依頼しているのです。フリーランスネットワークのToptalは5年前、約25人のプログラマーと、ほぼ同数のクライアントを持っていただけですが、今では、プログラマー数が数千を超え、AirbnbやPfizer、J.P Morgan を含む2000以上のクライアントを持つようになりました。ライバル機関の10x Managementでも、過去3年間でソフトウェアコーディングの契約平均予算が倍増し、広範なプロジェクトへのプログラマー探しなら同社と言われるようになっています。
プログラマーへの需要の加速にもかかわらず、Toptalは、アイビーリーグ入学審査レベルの審査を続けています。ホームベースを持たないこのバーチャル企業は、過去2か月間に1万5000人の応募がありましたが、採用したのはそのうちの3%以下です。審査過程には「人格を見るインタビュー」、「技術試験」、「ライブのコーディングテスト」、「実際のシナリオで候補者を評価するプロジェクト」の4段階があります。
Deloitteなどで働いた、ポルトガルのソフトウェアエンジニアのヘルダー・シルバさんは、初めの2段階に合格して、ライブコーディングテストに落ちました。問題を解くのに時間がかかりすぎたのです。「クライアントに多額な料金を請求しているので、エンジニアに可能な限り堪能であることを期待しているのだろう」というのが感想です。
「オンデマンドの天才」というキャッチフレーズで、10x Managementは特別に約100名のプログラマーを提供しています。ニューヨークを拠点とするこの代理店は、毎年数千の求職アプリケーションを受け取っていますが。同社の共同設立者で、元エンターテインメントマネジャーのリション・ブラムバーグ氏は、クライアントを映画スターになぞらえて「トム・クルーズへの需要は非常に大きいが、供給は非常に限られている」と表現しています。
エリートのフリーランスプログラマー
マーティン・ランゴフさん(39)は、エリートのフリーランスプログラマーの典型です。9歳でプログラミングを独学し、その後は非営利団体One Laptop Per Childの最高技術責任者として、ソフト・ハードウェアチーム、工業デザイン、生産とプロトタイプを管理しました。燃え尽きて、息子と過ごす時間を増やしたいと思い、10xに加わりました。選考過程は、オリンピックの予選のように厳しかったと言います。
ランゴフさんは時々、41フィートのヨット上でコードを書いています。最近は主要な米国法人用のセキュリティ製品の構築を助けました。普通は完了するのに3年はかかるこのプロジェクトも、10xチームでは3か月で行われたそうです。
「失敗すれば企業が多額の損失を被る、業務上枢要な仕事に呼び出されています。」今は、フルタイムで働いていた時よりも50%増の収入があるそうです。
独立したソフトウェア開発者は自由にプログラムし、大企業特有の官僚主義や無数の会合を避けることができます。アン・アダムスさん(30)は、バンクオブアメリカでのプログラミングの仕事を離れ、2013年にTopTalを通じてフリーランスになりました。「大企業では、正しい人との繋がりがなければ、ただ与えられた仕事をするだけです。Toptalでは、誰もが自分の仕事ができて、より生産性が上がります。」
プログラマーがフリーランス・ギグを選ぶ理由は、収入、自由、自分の仕事ができることにあるようです。