リモートワークでのコミュニケーションはGyazoを使いまくって会話している

今回は、スクリーンショットを共有できるソフトウェアGyazohttps://gyazo.com/ )などを開発されているNOTA Inc.代表の洛西氏にリモートワークの取り組みについてインタビューさせていただきました。

NOTA Inc. CEO 洛西氏インタビュー

名前も住所も性別も知らない人と5年間一緒にリモートワークをしていた

Kato: リモートワークをはじめたきっかけはなんですか?
Rakusai: 10年以上前に紙copihttp://www.kamilabo.jp/ )というソフトを開発してまして、サポート掲示板を設けてたんだけど、掲示板が荒れたりしてですね。「あのバグどうなってるんや」とかユーザーがどんどんサポート掲示板で勝手にやり取りするなかで、特定の人がずーっとサポートしてくれるようになったんですよ。

Kato: 特定のユーザーがですか?
Rakusai: そう。ずっと他のユーザーの質問とかに答えるようになって。紙copiを有料に変えたときに、「この人サポート担当になってくれるんじゃ?」って連絡したんですよね。その人はmi-keさんってハンドルネームだったんですけど、すごい丁寧なので女性だとずっと思ってたんだけど、実は男性だったことが後から判明して。(笑) そのときからずっとサポートの報酬を払いだしていたんですけども、なんと5年間会わなかったんですよ(笑)

Kato: 5年間1度も会わない状態で、どうやって連絡をとっていたんですか?
Rakusai: メールですね。

Kato: 何年くらいの話ですか?
Rakusai: 2001年くらいですね。当時、僕は京都に住んでて、その人はなんと埼玉に住んでた。住所すら知らなくて、初めて源泉徴収票を送るときに住所を知って、埼玉だったんだみたいな。(笑)そのときに男性だと判明しました。(笑)

Kato: そういう形からのスタートだったので、自然とリモートワークのようになったんですね。
Rakusai: そうそう。個人じゃなくて、組織的に仕事をはじめた第一歩がリモートワークだったんで、当然そんなものみたいな。顔とか見えなくても圧倒的に信頼できるし、ネットで無料期間中に一緒に働いてたみたいなもんだったんですよね。それでこの人絶対信用できるなと思って、本名がなんでも、どこに住んでても関係ないやみたいな感じだったんですよね。その後、シリコンバレーで登記したんですが、エンジニアは日本にいて、僕はアメリカにいてというような感じだったから、それも最初からリモートが前提でしたね。それが2007年くらいですね。

サンフランシスコと日本でのリモートワーク

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Kato: その後、サンフランシスコと京都で開発をされていったと
Rakusai: 主に京都とか、岐阜県の中津川とかですね。

Kato: 当時使ってたツールとしては、やはりスカイプがメインですか?
Rakusai: スカイプですね。

Kato: そのときは何の事業をされていたんですか?
そのときは社名のもとになっているNotaというサービスを開発していて、これは遠隔のホワイトボードシステムみたいな感じで、結構日本のコミュニティで使われ始めていたんで、それを海外展開するぞという感じだったんですよね。

Kato: Notaという製品があって、それを作って海外展開すると
Rakusai: そうそう。それをサンフランシスコに僕と他にアメリカ人も含む2人のスタッフがいて、エンジニアチームは日本にいてという感じですね。

アメリカでの3ヶ月間の英語研修

Kato: スカイプ以外のツールで何か使われてました?
Rakusai: いやぁ、当時何にも使ってなかったと思います。wikiみたいなものを何か使ってたかなぁ。Githubもなかったんで、バージョン管理はSubversionでしたね。Subversionはレビューとか難しいんで、コミットしていくだけでしたね。(笑)その後、2012年に日本に帰ってきて、僕は京都拠点になったんですけど、まだまだエンジニアは東京にいる人もいたりとか、アメリカにもスタッフがいたりして、ほんとリモートワークしかやってないですね。(笑) そういう文化があるので、今会社がおっきくなってきて、アルバイトいれて15人くらいなんですけど、旅行しながらリモートワークする社員もいます。社員にアメリカ人のBenってやつがいるんですけど、彼がポートランドに仲間と一緒に一軒借りて住んでるんです。そこで、エンジニアをそこに3ヶ月くらい英語研修で送り込んで、強制ホームステイしながら仕事をしたこともあります。(笑) でも、行ったらちゃんと英語うまくなって帰ってきました。その彼も3ヶ月向こうにいたけど、そんなに仕事には違和感なくて。違和感があったとすると、行った彼がリードエンジニアだったんですけど、彼がアメリカにいる間に日本で新しいエンジニアを面接しないといけないっていうんで、スカイプで面接して、それで採用したりしたんですけど、採用した人が、上司はいつ帰ってくるんですかね〜って。(笑)

プルリクの手引。UI変更があった場合は、ビフォーアフターをGyazoでスクリーンショットを貼って共有すること

Kato: 距離だけじゃなくて、時差まであるという環境でやられてるわけですけれども、リモートワークをするうえで、困ってることととか、何かそういうエピソードがあればお聞かせください。
Rakusai: んー、当時からそれがある意味あたりまえの環境だったので困ったことないんですけど、最近とにかくツールが便利なので、エンジニアはほんとにリモートワークいけるなというのを実感してます。特にGithubがいいですね。Githubはプルリクでちゃんと確認してレビューしてという体制を作ったので、それさえあれば。あとは問題になるといえばIssueを書かずにプルリクエストを送ってきたりすると、なんでこれが送られてきたかわからないので、NOTAではプルリクの手引というものがあって、「プルリクには十分な説明を書くこと」とか「関連するサイトやIssueのリンクを貼ること」とか、「UI変更があった場合は、ビフォーアフターをGyazoでスクリーンショットを貼って共有すること」とかそういうルールがありますね。ちゃんと文章というかIssueをこまめに書くタイプの人のほうがリモートワーク向いてますね。それを適当にやっちゃうと経緯がよくわからなくて、誰が何を考えてるかわからないまま進んでいっちゃうんですよね。

Kato: 社内のコミュニケーションの核になっているのはGithubということですかね?
Rakusai: そうですね。チャットもやっていて、最近Slack、その前HipChatを使っていました。

オフコミュニケーションは、Gyazoを使いまくっててSlackに貼っている

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Kato: Githubでレビューや仕事の内容のことはある程度できると思うんですが、仕事とあまり関係のないコミュニケーションって特にリモートワークだと大事じゃないですか。そこらへんというのはどうされていますか?
Rakusai: そういう意味ではGyazoを使いまくっててSlackにどんどん貼ってというのをやっていますね。というかSlackは7割くらい仕事と関係ない話題が流れてますね(笑) 最近Gyazoの文字入力機能が改良されて、memeってわかります?よくredditとかに流れてるネタ画像に英語のジョークが書いてあるやつなんですけど、そういう画像がたくさんSlackに流れてますね笑 CTOの増井さんを揶揄するやつとかもあります笑 こういうの重要ですよね。meme超おすすめです。画像使うときの破壊力っていうのが半端ないんで(笑) 雑談はそういう意味では積極的にするようにしていますね。

社内言語 日本語と英語の割合

Kato: 社内言語は英語ですか?
Rakusai: いや、社内言語は9割日本語ですね。 それでアメリカのBenと話すときは英語でって感じです。UIとかマーケティングの言語は、英語にしてます。そのへんは弊社は、かなり力入れてて、単なる翻訳というよりは英語を先に作ってそれから日本語に訳すくらいのことをしています。

Kato: プルリクエストとかは日本語ですか?
Rakusai: プルリクエストとかはだいたい日本語ですね。だけど、結構オープンソース活動してる人が多くて、そうするとコミットとかは英語で書くの慣れてるんですよね。Chromeエクステンションとかオープンソースで出してるんですけど、そういうのは英語でやってますね。さすがに話が込み入ってくると裏のSlackは日本語でやってたりとかそういうのはありますけど。

Kato: 15人くらいのメンバーの中ではエンジニアが一番多いのでしょうか?
Rakusai: そうですね。エンジニアが10人くらいで、サポートスタッフとあとマーケティングスタッフですね。

サイトをハッキングしてきたインド人をリモートワーク採用

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Kato: エンジニア以外のメンバー構成をお聞かせいただけますか?
Rakusai: アメリカにマーケティングスタッフのアメリカ人が一人とスウェーデンにセールススタッフが一人います。他に最近インドネシアに留学しちゃった学生のアルバイトが一人います。あとは2年くらい前に雇ったセキュリティハッカーのインド人がいます。このインド人が面白くて、「お前のサイトハッキングしたぞ」っていきなり連絡してきて、彼と交渉してたら「もう雇ってやるよ」みたいな感じになってですね。結局雇っちゃいました。(笑)

Kato: なかなかワールドワイドですね。(笑) 弊社では、今カナダの東海岸に一人メンバーがいて、ほとんど時差が真逆で、スカイプでやり取りするときは、日本側が夜まで起きてたりとか、カナダが朝早くに起きたりとかそういうことがあるんですけど、そういう時差の問題はないんでしょうか?
Rakusai: やっぱりアメリカとスウェーデンと日本でほぼ同時にスカイプをするのは不可能ですよね。

skype、slackで意識的に雑談し、Githubのコメントは辛辣に

Kato: そこらへんはリアルタイムでやり取りしなくていい仕組みを作ってるとかそういう解決策をとってるんですかね?
Rakusai: そうそう、今のところそこは日本側がマネージメントしてるんでなんとかなってますね。まぁでも実際の所ある程度問題はあるというか、雑談みたいなのができないという問題はあります。そういう意味でいうとスカイプするとだいたい最初は雑談してますよね。

Kato: 意識的にコミュニケーションをとっているということですね。
Rakusai: はい、そうですね。スカイプはじめて最初の30分は雑談してっていうのが結構あります。そこはたぶん社内の文化の問題で、さっき言ったSlackとかでも結構雑談が多いので、スカイプはじまっていきなり真面目な議論とかはやっぱりあんまりないので。

Kato: そこは意識的にそうされたのか、勝手にそうなっていったのか?
Rakusai: あーいや、やっぱり意識的ですね。ないとやっぱりギクシャクしてくるんで。

Kato: 意識的にそういう社内文化というか空気感というかそういうのを作られていったと。
Rakusai: そうですね。というかスカイプって雑談だけでよくて、まじめな話はGithubかSlackでやればいいんじゃないみたいな(笑) 結構うちGithubのコメントは辛辣だったりするんですよ。これは結構重要で、Githubはきびしいことをバシバシ書いて、Slackではくだらないことを話してますね笑

Kato: それが許容されるというかお互い理解あるということですね。
Rakusai: そうそう。この文化を広めるのって結構難しくて、オープンソース・コミュニティや、大学とかでアカデミックな世界にいた人はわりと慣れてるんですよ。リードエンジニアの杉本君(uiureo)とかは、そういう経験が豊富なので、場合によっては無言でプルリクエスト閉じるみたいなこともあります。(笑)

今回のインタビューはスケジュールの都合上、短い時間のインタビューでしたが、それでもたくさんの面白い話を伺うことができました。リモートワークを始めたきっかけが、オフィスワークかリモートワークかの選択肢などはなく、仕事を始めたら自然とリモートワークだった点など弊社とも共通する部分が多くあり、共感できました。リモートワークでは軽薄になりがちなコミュニケーションを改善するために、意識的に雑談の時間をつくり、仕事の話は率直に指摘する。
NOTAのリモートワークに対する取り組みを弊社でも参考にさせていただきたいと思います。

本日は貴重なお話ありがとうございました。

rakusai
洛西一周
NOTA Inc.CEO。 12才のときからプログラミングを始める。サービスディレクションを担当。 2003年度IPA未踏ソフトウェア創造事業認定スーパークリエータ。 2007年慶應義塾大学大学SFC修士課程修了。

NOTA inc.
http://www.notainc.com/

世界最高のスクリーンショットサービス Gyazo
https://gyazo.com/

さわって、つまんで、書くノート Davinci Note
http://davin.ci/jp/

Photo Peach
http://photopeach.com/

インタビュアー

Kato
当メディア「anywher」を運営するWM & Creators株式会社 CTO

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