世界最大のリスクマネジメント団体RIMSがリモートワークポリシーの必要性を警告

3,500以上の産業を代表し、米国、カナダ、メキシコ、日本に81支部を持って、1万人以上のリスク管理専門家を世界に派遣している、リスクと保険の管理機関RIMSは、この7月、リモートワーカーを雇用する企業に対して、リスク管理の専門家からリモートワークポリシーの作成支援を受けるよう勧めました。
新しいテクノロジーとビジネス界の進化は、これまで多くの労働者にリモートワークの扉を開いてきました。
例えば、2003年から2011年までの8年間にリモートワーカーが英国企業に占める割合が3倍に増え、現在では全体の約6割に達していると英国産業連盟が発表しています。
従業員にリモートワークの権限を与えることには、多くの利点があります。
Cisco Systems社はリモートワークの導入が同社に年間推定2億7700万ドルの経費節減を可能にし、従業員の69%もオフィスの外から働く方が生産性が上がると答えているとしています。
しかし、最近のRIMSの報告では、リモートワークが企業に潜在的なリスクをもたらしていることも警告されています。
そのために、リモートワークポリシーの作成が必要になってくるわけですが、それでは、このリスクとはいったいどのようなものでしょうか。
同月末の「リスク管理者は、リモートワークポリシーの作成にどう貢献できるのか」という記事には、この報告書の内容が掘り下げられています。
21世紀の欧米のオフィスを見渡すと、いくつかの空席が目につくことがあります。週に少なくとも1日は、オフィス以外から働いている従業員が増えているのです。
数年前にはオフィスの最新トレンドだったリモートワークは、今では多くの企業で日常のことになっています。
RIMSの新しい役員報告書「リスクマネージメントとリモートワークポリシー」には、詳細なリモートワークポリシーを持つことが必要である、と述べられています。
詳細なポリシーでは、組織がリモートワーカーへのパラメータ、ガイドライン、ワーカーへの期待をレイアウトすることができます。
この報告書では、リモートワークによってもたらされる利点と課題だけでなく、リスク管理の専門家が組織のポリシー作成に果たすべき役割も議論されています。

データのプライバシーとセキュリティの問題

報告書は、リモートワークの利点として、雇用者と被雇用者の両方にとってのコストの削減、優れた才能の保持が可能になること、より広いプールから従業員を雇えることなどを挙げています。
また課題の中で最も重大なのは、機密性とプライバシーの問題だとしています。
組織を狙ったサイバー攻撃は、直接リモートワーカーから発生するものではありませんが、露出は存在しています。
リモートワークポリシーの作成にIT部門を関与させることによって、企業は、重要書類がリモートワーカーのデスクトップやパソコン上ではなく、プロテクトされて共有されたネットワーク上のみに保存されるようにすることができます。
生産性や従業員管理への懸念に加えて、報告書は「社会的なリスク」も強調しています。
それはリモートワーカーが感じる、同僚や管理者からの疎外感です。
また、組織が一貫性のないアプローチで従業員にリモートワークを許可してしまうと、従業員から雇用慣行賠償責任を問われたり、差別への非難にさらされる可能性もあります。
そこで報告書は、毎日または毎週の電話やビデオによるミーティングを含めた、構造化した通信プロトコルを確立することを勧めています。

リモートワーカーの労災への懸念

リモートワーカーのために、リスク管理の専門家や人材担当の幹部が直面しているもうひとつの課題は、治療の必要を伴うような事故が起きた場合、それが業務活動の結果であるかどうかを決定することです。
業務活動の結果であれば、リモートワーカーの補償請求を認めることもできます。
このようなことは、あいまいにしておけない課題です。
事実上、多くのリモートワーカーは、自宅やその他の場所から単独で働いています。
例えばリモートワーカーが仕事中に転倒した場合でも、ほとんどの場合、証人となる人は周りにいません。
その他のリモートワーカーのリスクには、テクノロジーを間違った方法で使ったり、人間工学的に不備のあるワークスペースで長時間作業をつづけることによって起こる、手や背中を痛める事故などがあります。
報告書は、健康上の問題を会社へ報告する手順についても明確な規定を作って、問題を解決することを勧めています。

社会や職場に新しいトレンドが生まれると、日本では規定ができるまで待ってから導入するケースが多いようですが、欧米では、規定のないところには自由に新しい方法が取り入れられる傾向があります。
リモートワークも規定のないままに、ここまで発展してきましたが、すでにリスク管理や明確なポリシーの確立が必要なところまで来ているということでしょう。

参考
http://www.commercialriskeurope.com/
http://www.propertycasualty360.com/

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