リモートワーカーを生み出すクラウドソーシングの発展

クラウドソーシングとは?

昨今、世の中の雇用の形が大きく変わりつつあります。
それはオフィスに行かず、自分の好きな場所で働く「リモートワーカー」の台頭です。そしてその台頭を支えている一部は、クラウドソーシングサービスの発展といっても過言ではないでしょう。

クラウドソーシングサービスとは、不特定多数の人物が、インターネットを介し、企業の外部委託業務を受注することです。
2005年にジェフ・ハウによって唱えられた考えです。

このサービスにより、技術のあるリモートワーカーは仕事を安定して受注することができます。
また企業側は、今まで業者に外注していたものを、個人に発注することで、大幅にコストを削減することができます。このサービスは、受注側、発注側の両方にメリットがあるシステムです。

このサービスを用いて受注・発注できる仕事の内容は多岐にわたります。
例としては、システム開発・運用、文章制作・広告などのライティング、翻訳業務、WEBデザイン、チラシ作り、音楽制作、動画政策、マーケティング、コンサルティングなど企業は幅広い分野の仕事を発注・依頼することができます。

東京工業大学の比嘉教授によると、クラウドソーシングでの業務は大きく分けて3つに分類することができます。

1つ目は、デザイン&クリエイティブ型です。企業のロゴ制作やデザインが例として挙げられます。時間の見通しが立てづらい、創造的な制作に該当します。

2つ目は、プロジェクト型です。スケジュールを組み、時間を決めて仕事を行います。ライティングからデータエントリーまで、多様な仕事がこれに該当します。サービスでの報酬は固定給が一般的ですが、プロジェクト型に関しては、時給制を導入する場合もあります。

3つ目はマイクロタスク型です。細分化された簡易的な業務を、低単価で行います。専門的な知識を必要としない、アルバイト向きの内容が多いです。

クラウドソーシングの発展

クラウドソーシングサービスの市場は、急激に拡大しています。
あなたの周りにも、サービスを利用している方がいるかもしれません。

世界規模であると、2016年には1兆円市場になるとの予測がされています。これは東京工業大学の比嘉教授による研究結果です。
また、国内市場においても、クラウドソーシングサービスは目覚ましい発展を遂げています。矢野経済研究所の「BPO市場・クラウドソーシング市場に関する調査結果2013」によると、2017年には約1500億円まで国内市場が成長するという調査結果が出ています。
また「リクルートワークス」の調査結果によれば、2023年頃には国内市場が1兆円に達するという予測もされています。これからクラウドソーシングサービスを活用する企業は増加し、能力ある受注者の需要は高まっていくでしょう。
リモートワークをすることが、当たり前となる将来は目の前かもしれません。

国内における主なクラウドソーシングサービス事業者

日本のクラウドソーシングサービスを切り開いたのは、秋好陽介氏が設立した「ランサーズ」です。2008年から運用を開始し、2014年には発注業者が7万社、登録者が30万人にまで成長を遂げました。時間と場所にとらわれない働きを目指すことを理念とし、日本のクラウドソーシング業界を支えています。

もう一つ、日本において非常に力を持ったサービス事業者がいます。それは、吉田浩一郎氏が設立した「クラウドワークス」です。クラウドワークスが業界に参入したのは2012年と、ランサーズより4年も遅いです。それにも関わらず、ランサーズと並ぶ国内最大級の事業者に成長しました。今後この2社の成長から目が離せません。

就職活動をせずにリモートワーカーを志す学生が現れるか

クラウドソーシングサービスの発展により、日本は知識、技術があれば会社に属さずとも生活ができる国になる事が予想されます。
しかし、2016年現在、日本のクラウドソーシングサービス大手のクラウドワークスにおいて、月収20万円を超えているのは、登録者の1パーセントにも及びません。
これには様々な要因が挙げられます。まずはサービスの普及が十分でないこと、そして副業や小遣い稼ぎにサービスを利用している、主婦やサラリーマン、退職者のユーザーが殆どだということです。本業としてサービスを捉え、リモートワーカーになるには専門的な知識、技術が必要です。インターネットではクラウドソーシングでは稼げない、という声も上がっていますが、本業として取り組んでいる人間が少ない以上、当然の結果だと思います。

サービスの市場規模の拡大から、これからサービスを本業として捉え、リモートワーカーとして生活する方は増えると考えられます。
また、発注者側の問題を解決することが、リモートワーカー増加のカギとなるでしょう。例えば、格安の案件の発注ができないようにすることが挙げられます。案件の中には、時給換算で最低賃金に満たない給料のものもあるのが現状です。

現在は大学卒業前に就職活動を行うのが一般的ですが、その伝統的な習慣も変わる時代が来るかもしれません。学生時代から専門的な知識、能力を身に着けた学生がクラウドソーシングサービスを介して給料をもらい、就職活動を経ずにリモートワーカーを志すケースも出てくるでしょう。
また、アルバイトの形も変わることが予想されます。
現在では店舗型のアルバイトをする学生や主婦が殆どですが、リモートワークを中心として収入を得るのが当たり前の時代が訪れるでしょう。

参考記事・研究
リクルートワークス
http://www.works-i.com/research/2014/2025yosoku/

比嘉邦彦(2013) 「日本におけるマイクロタスク型クラウドソーシング市場の現状調査」
http://ci.nii.ac.jp/naid/110009603651

総務省
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc141240.html

Image credit: Volkan Olmez via unsplash

SPONCER
Related Article